↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/228

あたためた水

霧生四の仮設居住棟では、給湯が一日に二度しか動かなかった。移住者の生活支援員、堀江絹は、朝の配水時間に子どもを抱いた父親と出会った。


「温かい湯を少しもらえませんか。乳児用の器具を洗いたいんです」


絹は予定表を見た。次の加熱までは六時間ある。医療区画には湯があるが、感染対策のため器具を持ち込めない。


彼女は厨房へ行った。食堂の調理主任が使う蒸気管なら、少量の水だけ温められるという。ただし温度を確かめる計器がない。絹は病院の温度計を借り、冷水と混ぜて適温にする方法を試した。


「毎日、これを続けるんですか」


調理主任が聞いた。


「必要なら。できれば明日からは、もっと楽に」


絹は施設管理室へ依頼書を出した。大規模な設備工事ではなく、小さな加熱器の移設で済むかもしれない。


その日の夕方、父親が洗い終えた器具を乾かしていた。赤ん坊は眠っている。戦況について彼は何も尋ねなかった。代わりに、ここで洗濯物はどこへ干せばいいかと聞いた。


施設管理室からの返答は、必要な電力が取れないというものだった。絹は依頼を引っ込める代わりに、給湯の時間帯をずらす案を出した。配管の空き容量が分かれば、小さな設備を一つ増やせるかもしれない。調理主任は忙しい手を止めずに配管図を探してくれた。誰も特別な約束はしなかったが、台所の壁に一枚の図が増えた。その図を眺める職員が、一人、また一人と増えていった。


絹は空いている室内を案内した。生き延びたあとには、温める水も、乾かす場所も要る。廊下で赤ん坊の小さな寝息を聞きながら、絹は明日の給湯表を書き直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。