↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/228

旋律の端で

『星渡』の小型護衛艇で、操縦士の葛城修は窓を閉めたがっていた。


真珠色の艦影を見続けていると、距離の感覚が曖昧になる。監視画面へ視線を移しても同じだった。艇長は窓の遮光板を下ろし、推進器の手動運転へ切り替えた。


「赤い反応は?」


「まだある。数は分からん」


艇長の声は静かだった。彼らの艇は航路図から遅れがちで、輸送船団の最後尾にいる。


音楽は、遮光板の向こうでも変わらず響いた。修には、旋律の下に小さな打楽器の音が混じって聞こえた。隣の兵士は、そんな音はしないと言う。


修は口を閉じ、速度計を見ることにした。燃料は減っている。曳航を頼むほどではないが、余裕もない。艇長は主機の出力を少し下げ、輸送船へ機関の状況を伝えた。


そのとき、赤い反応が一瞬だけ航路前方に現れた。修の手が固まる。船長から『右へ一度』という指示が入り、彼は遅れずに操舵した。


船体が静かに傾く。外では真珠色の光がいくつも重なっていた。


操縦席の背後では、若い兵士が手の震えを隠すように膝を握っていた。修は操縦の合間に水筒を渡した。兵士は受け取っても飲めず、ただ手で包んでいる。修も似た気持ちだった。音楽が鳴るほど外の光景が恐ろしくなるのは、おかしなことではない。艇長は二人に短い休憩を命じ、自ら操縦席を引き受けた。数分後、修が戻ると速度計の針は安定していた。誰もが強くいられなくても、持ち場は交代できた。


修は再び窓を見ないまま操縦した。艇長の声が短く続き、そのたびに腕の力が少しずつ戻ってきた。


修は音楽が美しいかどうか、もう考えなかった。艇長の短い声と、速度計の針だけを頼りに、狭い安全帯を進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。