救援を断る理由
補給門に到着した船団から、医療用の小型艇が引き返したいと申し出た。
後方の貨物船で急病人が出たらしい。水城灯は許可条件を確認した。門の外側は警戒宙域で、往復すれば燃料が足りなくなるかもしれない。
「こちらから迎えに行くほうがいいのでは」
灯が提案すると、小型艇の医師は患者の状態を説明した。酸素供給が短時間しか持たない。搬送設備が小型艇にしかない。
灯は急いで門の通行を調整し、曳航艇を前方に待機させた。
「戻るための燃料は、ここで渡します」
医師は礼を言った。
補助員が心配そうに灯を見る。以前の閉鎖遅延で査問を受けたばかりだ。灯はあえて判断記録を開き、緊急搬送の理由をすべて書いた。誰かに隠れて例外を作るつもりはなかった。
小型艇が帰ってきたとき、医師は疲れ切っていた。患者は後方の医療船へ移された。生命維持装置の数字は厳しいが、処置を続けられる場所までは運べた。
小型艇を送り出す前、灯は回収用の通信周波数を二系統用意した。片方が乱れても呼び戻せるようにするためだ。補助員は曳航艇の燃料を計算し、門の内側に予備の医療器具を置いた。急病人を迎える仕事は、勇敢な一人が飛び出せば済むわけではない。戻る場所を作る人が必要だった。小型艇の影が遠ざかる間、灯は通話器から離れなかった。返ってきた短い『到着』の報告を聞くまで、門の開放予定を保留にした。
医師が戻る場所を間違えないよう、門の誘導灯を一段明るくした。暗い宙域で見える確かな目印が、今は必要だった。
灯は門の向こうの赤い観測点を見た。危険があるから閉じる。それでも、閉じてしまえば届かない命がある。彼女は次の当直へ、判断の理由を詳しく引き継いだ。




