星系を越える不一致
湊透は、三つの星系から届いた真珠艦隊の目撃報告を読み比べた。
同じ時刻を示す記録がある。だが艦影の数も、音楽が続いた長さも違った。互いに遠い場所で同時に現れたのか、時計のずれなのか、そもそも同じ現象なのか。
通信室では『艦隊が一つとは限らない』という意見まで出た。透はそれも仮説として保存した。人々が知りたいのは答えであり、正直な空欄ではない。それでも空欄を無理に埋めれば、航路の判断が狂う。
「出現予測は作れそうですか」
上官が尋ねた。
「作れても、使わせるのは危険です。今の資料では当たる理由がありません」
上官は渋い顔で、予測表の公開を見送った。
透は報告した観測員たちに、音源の特定方法を尋ねる追加質問を送った。返事は一つずつ遅れて届く。ある者は『耳で聞いた』と記し、ある者は『機械の音だった』と書いた。
夜、通信室の若い職員が古い音声を再生していた。透は席へ戻るよう言い、仕事が終わったら自由に聴いていいと付け加えた。
別の観測所へ問い合わせると、古い時刻同期装置の交換が遅れていることが分かった。透は装置の誤差を補正してみたが、報告の不一致はすべて説明できなかった。それでも何件かは同時刻の記録として比較し直せる。小さな前進だった。透は各観測員へ、同期の方法と校正した日時を追加してもらった。答えが出ないからといって、調べる手順まで曖昧にする必要はない。通信室の夜は、地味な確認作業で明けていった。
彼自身もあの旋律が耳に残っていた。恐怖なのか懐かしさなのか分からない。分からないことを、彼は無理に名づけなかった。




