失われた港の台帳
成瀬亘が追っていた荷物の記録から、閉鎖された中継港の名前が見つかった。
かつての港『波折三』は、星図では通信途絶になっている。しかしその港を出た貨物の番号が、別の船の積載表に残っていた。戦争の前から運行していた無人輸送網の一部らしい。
亘は倉庫に残った古い台帳を探した。紙に印刷された地図には、今の航路図にない接続線が細く描かれている。途中の二つの港も連絡不能だった。
「これを通れば近道になるんじゃないか」
同僚が言った。亘は首を振った。
「道があったことと、今も通れることは違う」
それでも、この記録が役立つ可能性はあった。人が避難した後も無人艇が走っているなら、誰かの荷物や通信が外へ運ばれるかもしれない。
亘は古い配送番号を湊透へ送った。通信室では失われた星系からの信号を調べている。何かを照合できればいいと思った。
夕方、種子の入った箱の受領確認が届いた。届け先の女性が『故郷の庭にあった木です』と返信してきた。亘はその一行を台帳の余白へ写した。
古い配送網の地図を見た通信士は、『波折三』の中継器番号に見覚えがあると答えた。現在の通信網にも一部が引き継がれているらしい。亘は詳しい照合を任せ、現物の箱を整理した。古い地図が役に立つならうれしい。だが危険な道へ無理に人を送ってほしくはない。彼は台帳の写しに『未確認航路』と大きく記し、誰が見ても分かるよう赤い印をつけた。
通信係への資料には、配送番号の読み違いを防ぐ対照表も添えた。亘は届いた荷物の送り先だけは確かだと念を押した。
失われた港の地名を消さない理由が、少しだけ増えた気がした。




