遅れて届く誕生日
『冬星』の看護主任、鷺沢沙耶は、医療物資の箱から小さな包みを見つけた。
宛先は義肢を使い始めた少年。送り主は、別の避難船で移動したという叔母だった。箱が港を巡っている間に、少年の誕生日は三週間前に過ぎていた。
沙耶は包みを本人へ渡した。中には地球の古い海を描いた絵葉書と、手作りの青い布袋が入っていた。少年はしばらく袋の口を開いたり閉じたりしていた。
「誕生日、終わっちゃった」
「届いた日は今日だから、今日のお祝いにしてもいいでしょう」
沙耶が言うと、少年は照れたように笑った。
病院船の厨房で、配給の果物を薄く切って小さな皿に並べた。豪華な菓子は作れない。それでも、同じ病室の子どもたちが手伝ってくれた。
少年は歩いて食堂まで来た。途中で少し息を切らしたが、椅子に座るまで誰にも抱えてもらわなかった。
絵葉書の裏には、叔母の新しい連絡番号が書いてあった。沙耶が照会すると、接続可能な港が見つかった。すぐには話せないが、伝言を送れる。
「元気に歩いているって伝えて」
少年は新しい布袋に薬と小さな工具を入れ、義肢の手入れに使うことにした。叔母が何を入れるつもりで作ったのかは分からないが、自分が使うものなら毎日持ち歩ける。沙耶は袋に負担のかからない留め具を付けた。生まれた港では当たり前だった誕生日も、ここでは少し違う形になる。それでも少年は『来年も歩いてお祝いしたい』と言った。沙耶はその約束を心の中で大切にした。
少年は言った。沙耶はその言葉を一字も変えず送った。返事が届くまでの時間は分からない。だからその日は皆で、少し遅い誕生日を祝った。




