守るべき時間
補給門の水城灯は、閉鎖指令を四十三秒遅らせた件で査問を受けていた。
司令部の担当官は淡々と質問した。なぜ従わなかったのか。なぜ独断で曳航を依頼したのか。その判断を別の人員にも認めるのか。
灯は一つずつ答えた。百二十七人を通したこと。別の船の運航には影響がなかったこと。閉鎖が遅れたことで危険が増えた可能性も、否定しなかった。
「規則は必要です」
灯は言った。
「だから、例外を使った責任は私にあります」
査問は長引いた。最後に、次回からは指揮系統へ早く報告するよう指導され、処分の判断は保留になった。
門に戻ると、交代員が小さな封筒を渡した。通過した民間船の乗客から届いた礼状だった。十人ほどの名前があり、文章は短かった。彼らは灯の名を知らず、『門を開けてくれた人へ』と書いていた。
灯は封筒を机の引き出しにしまった。明日の閉鎖時刻は変更されない。危険度も下がっていない。
窓の外で、新しい船団が航路に入る。遅い一隻が見えた。灯は交通状況を確かめ、補助曳航艇を早めに配置するよう命じた。同じ賭けを繰り返さずに済むよう、守れる時間を前もって作ろうとしていた。
査問を終えた灯は、次の当直表に曳航艇との連絡手順を書き加えた。以前は緊急時にだけ呼ぶ設備だったが、門が閉まる前から待機させれば判断の余地が広がる。部下は『毎回そうするのは手間です』と漏らした。灯もそう思った。それでも、一度きりの幸運を制度に置き換えられるなら価値がある。閉鎖時刻の数字は同じでも、その前にできることは昨日より増えていた。
灯は新しい手順を印刷して全員へ配った。自分が不在の夜でも使える形にするためだった。




