↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/228

溶接の火花

灯標七の外壁整備では、音羽叶芽が無重力用の溶接器を握っていた。


修理するのは、赤い衝撃によって緩んだ補助係留環。目立つ破壊はないが、金属の接合面が少しずつ裂けている。大型船が一度でも強く引けば、環ごと外れる可能性があった。


「予備の環はありませんか」


新入りが尋ねた。


「別の港にある。今、届くとは限らない」


叶芽は古い補修板を切り出し、外壁に合わせて削った。新品と違って形が整わない。手間はかかるが、構造試験に通れば使える。


作業中、ヘルメットの通信に真珠艦隊の録音が紛れ込んだ。誰かが慰めになると考えて、共有回線に流したらしい。叶芽は通信を切った。


「作業中に聞くものじゃない」


足元では、係留船の振動がわずかに伝わる。音を聞き逃せば破断の兆候に気づけない。


六時間後、補修板の試験が終わった。規定値にはぎりぎり届いている。叶芽は完成印の横に、再検査予定日を大きく書いた。


控室へ戻ると、整備員の一人があの音楽を聴いていた。叶芽は止めなかった。


「きれいだろ」


「そうだね。でも、明日もここを直すよ」


溶接の途中、金属片が手袋をかすめた。叶芽は手を止め、傷のある手袋を交換した。若い整備士は『まだ使えそうです』と言ったが、彼女は首を振った。装備を惜しんで人が失われれば、その後の修理ができない。新しい手袋が足りなくなりつつあることは承知している。それでも予備の数を正直に台帳へ書き、補給を頼むしかなかった。安全な仕事を続けるのも戦いだった。


翌朝の補修予定には、手袋の確認を最初に書いた。忙しいからと飛ばしていい手順ではなかった。新入りも自分の手袋を見直した。


二人は冷めた飲み物を分け、次の補修箇所を確かめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。