会議室の空白席
人類圏共同防衛評議会の遠隔会議には、二十七の代表席が用意されていた。
実際に映像が点いたのは十八席。五席は回線途絶、四席は接続中のまま時間切れになった。議長の森川宗一は、そのまま会議を始めた。
議題は灯標七の守備を増やすか、補給線を後退させるか。前線の軍人は補強を求め、後方の行政官は予備の燃料が足りないと答えた。
真珠艦隊の記録が映ると、意見はさらに割れた。敵を攻撃したと見る代表と、偶然同じ場所に現れただけと見る代表。どちらも決め手は持っていない。
「第三勢力を戦力に算入する案は採りません」
森川は言った。
「だが観測をやめるわけでもない」
誰かが反論しかけた。その画面は途中で消え、接続不良の表示に変わった。議長は発言内容を推測で補わなかった。
結論として、灯標七へ最低限の補給と観測器材を送ることだけが決まった。増援艦は別途協議。避難計画は続行。選択はどれも不完全だった。
会議が終わると、森川は空白の九席を一つずつ見た。代表が不在だからといって、その星系の人々がいなくなったと決まったわけではない。会議録には、議席を削除せず『連絡待ち』と残した。
会議の通信が終わったあと、森川の端末へ一枚の地図が残った。接続できなかった代表たちの管轄域には、かつて学校や港があったことを示す印が並ぶ。彼は通信担当へ、次回の会議前に中継方法を変えるよう頼んだ。遠隔出席が難しいなら、記録音声でもよい。意思を伝える方法が一つしかないなら、それが壊れた瞬間にその星系の声は消える。議席の数はそのために減らさなかった。
失われた議席から、いつか遅い返事が届くかもしれない。森川はその欄の時刻表示を止めなかった。




