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真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


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返送された救難信号

灯標七の通信室へ、一か月前に送られた救難信号が戻ってきた。


発信元は第十八居住星系。倉科澪が灰色のまま残している、あの宙域だった。信号は短く、座標と酸素の残量が繰り返されていた。ただし送信時刻が途中で逆戻りし、現在の時計と比較できない。


「生存者でしょうか」


担当者が湊透に尋ねた。透は即答しなかった。戻ってきたのが誰かの声なのか、反射した古い信号なのか判別できない。遠方の通信網では、壊れた中継装置が同じ文を何年も繰り返すことがある。


それでも、救難という文字がある限り放置はできなかった。透は既存の観測結果と突き合わせ、宙域を通れる小型艇があるか調べた。候補は二隻。どちらも補給用で、戦闘能力はない。


澪は出航許可を求める文書を受け取り、危険度欄を埋めようとした。数字を記せば判断が終わるわけではない。


「調査に出る人たちにも、この信号の不確かさを全部知らせてください」


彼女はそう添えて文書を返した。


その夜、救難信号はまた届いた。文字列は同じなのに、最後の一音だけが少し長かった。透は記録を保存し、相違点を確認した。そこに人の意思があるのかどうか、彼にはまだ分からなかった。


翌朝、偵察艇の候補の一隻は機関故障で外れた。残る一隻にも、医療物資を運ぶ予定が入っている。澪は調査を望む家族へ現状を説明するため、受付担当を増やした。『見捨てるのか』という声には答えが難しい。透は通信のコピーを提出し、調査できない理由も同じ紙に記した。できないことを隠せば、誰かが自分の船で危険な宙域へ向かうかもしれなかった。


待つ家族にとって、同じ信号が届く夜は希望でもあり、眠れない夜でもあった。

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