↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/228

音の記録者

湊透は、真珠艦隊出現時の音声記録を百四十二件受け取った。


そのうち九十件には、楽器に似た波形が残っていた。残りは無音か通常の雑音で、聞いた本人が鮮明に覚えていても装置には記録されていない。透は成功と失敗を同じ表に並べた。


「同じ音楽だと確認できるのか」


上官が聞いた。


「一部は似ています。ただ、完全一致はしていません」


「では偽物が混じっている」


「その可能性もあります。機器の違いもあります」


透は断言を避けた。録音を聴いていると、静かな弦に重なる金管の響きが現れた。しかし別の装置で再生すると、同じ箇所で何も聞こえない。耳の問題かもしれず、記録方式の差かもしれない。


彼は実験室の扉を開け、外の廊下で待つ『芦月』の乗員を招いた。乗員は同じファイルを三度聴き、三度目だけ『ここです』と指した。


「すみません。自分でも分からない」


乗員が頭を下げる。


「謝らないでください。違いがあることを残します」


透は聞こえた位置を記録した。人間の証言は揺れる。だから価値がないのではなく、揺れた事実も観測の一部だった。


音声波形の比較には、古い音楽教師にも協力してもらった。教師は三つの録音を聴き、拍子が揃う部分と揃わない部分を指した。ただし、楽器の名前を当てることはできないと断った。透は説明を記録に添えた。専門家を集めれば必ず答えに着くわけではない。それでも、分からない範囲を狭める方法は増える。教師は帰り際に、こんな音楽は初めて聞いたと呟いた。


夜、透は上官へ報告した。『出現時に複数艦で音楽様現象を確認。発生源は特定できず。消失と同時に終了した証言が多数』。机には未分類の音声がまだ山ほど残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。