港を通らない荷
瑞帆六から届いた冷却材が、灯標七の貨物検査所で止まった。宛先は霧生四、最終的には冷域九だが、容器の表示が旧規格のままだった。係員は危険物と判断し、開封を禁じた。
音羽叶芽は検査票を読み、瑞帆六の賀来冬至へ連絡した。冷却材は危険性が低いと証明できている。しかしそれを運ぶ容器が古く、耐圧情報が不足していた。
「通してから考えるわけにはいきませんか」
運送係が焦る。叶芽は事故が起きれば港の別の便まで止まると説明した。緊急便だからこそ、落ち着いて使える容器を探さなければならない。
倉庫に残っていた予備容器は容量が小さかった。二つへ分ければ送れるが、荷物の数が増える。検査係は封印札を付け替え、書類を直した。
容器を二つに分ける作業は単純ではなかった。開封した時点で内容物の一部が空気へ触れるため、専用の作業室と技師が必要だった。叶芽は運送係へ、港の通常の安全規則が緊急時でも消えない理由を説明した。急ぐなら確認を省くのではなく、確認できる人を先に呼ぶ。その言葉で係員は別の持ち場から技師を探してきた。作業は夜まで続き、終了時に温度と密閉状態を記録した。遅れの原因を隠さなければ、次の輸送便では同じ問題を避けられる。
係員が持ち出した新しい容器にも、製造番号を確かめる時間が要った。叶芽は二つの番号を読み上げ、別の係員に復唱してもらった。確認が済むと、運送係はようやく深く息を吐いた。
検査員は封印札の時刻も記入した。
夜、貨物はようやく次の船に積まれた。遅れは消えない。叶芽は冷域九へ到着予定の変更を知らせ、受領の返事を待つことにした。




