航路にない灯
『星渡』の浅海朔は、冷域九への旧航路に浮かぶ小さな光を観測した。昔の標識にしては位置が違い、信号の間隔も一定ではない。通れない場所に新しい灯が生まれたように見えた。
「赤い反応でしょうか」
操縦士が聞く。朔は色と周波数を確かめた。どちらとも一致しない。朔は無人探査機の投入を提案したが、浦上柊は帰還可能な燃料があるか先に調べさせた。
探査機は距離を詰めず、遠くから測定した。反射光は人工物に似ていた。瑞帆六の賀来冬至へ画像を送ると、古い貨物標識の破片かもしれないという回答が来た。
確認のため近づけば、時間と燃料を使う。朔は灯を新しい目印にはせず、危険箇所の一つとして記録した。
探査機が送った画像は、画面の端だけ明るさが不自然だった。浅海朔は機器の感度設定を疑い、別の測定方法で確かめさせた。違いは小さくなったが消えない。浦上は近づくかどうかを議論せず、まず探査機が帰還できる距離を守らせた。艦内では貨物船の改装が続いており、部品一つの不足も出航日程に響く。朔は不確かな光のために救援の準備を止めたくなかった。画像を受け取った賀来からは、古い破片の形状資料が送られてきた。それもまた断定には足りなかった。
古い標識の可能性が残る以上、航路図から光の位置を消すわけにもいかなかった。朔は記号を一つ増やし、未知の発光源と書いた。次の当直者が同じ光を見ても、先に送られた情報へ戻れるようにした。
次の計測で光は消えた。見失った理由は分からない。朔は消失ではなく『再観測できず』と記し、当直者へ引き継いだ。船の外に何かがあることと、それを利用できることは違う。




