閉じられた退避門
灯標七から遠く離れた補給門で、門番の水城灯は臨時の閉鎖指令を受け取った。
ここは人類圏の後方に続く航路の喉元だ。通行可能な時間帯を誤れば、前線から逃げる輸送船が一度に詰まる。閉鎖を命じた司令部は、赤い観測点が近くで増えたとしか知らせてこなかった。
「今、外に何隻います」
灯が尋ねると、交代員は七隻と答えた。四隻は軍籍、三隻は民間。そのうち民間の一隻は推進器が弱っている。
規則では直ちに門を閉じなければならない。灯は手元の時計を見た。残り一分二十秒。遅い船の推定到着まで二分。
彼女は閉鎖指令を保留し、先行する軍艦へ連絡した。
「後方の一隻を曳航できますか」
「可能だが、双方とも速度を落とす」
「門を通るまで守ります」
返答を待つ間、司令部から催促が三件届いた。灯はすべて受領し、まだ門を閉じなかった。違反記録が残ることも承知していた。
曳航された民間船が安全帯へ入ったのは閉鎖予定の四十三秒後だった。灯はただちに門を切り離した。通信の端で、軍艦長が短く礼を言った。
閉鎖後、門の近くにいた小型作業艇が戻れず、外側で待機することになった。灯は予備の救命筏を向こうへ送ろうとしたが、門を開け直す危険が大きい。作業艇の燃料と酸素が足りることを何度も確かめ、別の回収船を迂回させた。最後の一隻を通すための判断が、他の一隻へ新しい負担を生む。そのことも灯は報告から省かなかった。
門の外に残った作業員からも、了解の信号が届いた。灯はそれを受け取って記録を閉じた。
事後報告に理由を書き込む手は重かった。だが、遅れた船から届いた乗員名簿を見て、書き直す気はなくなった。百二十七人の名前が、そこにあった。




