まだ灯る羽白
霧生四の秋元莉央は、評議会から届いた羽白星系の照会を受け取った。船の識別符号を照合する仕事は単純に見えるが、戦争が始まってから偽装と再登録が増えていた。
過去の入港記録には羽白で生産された農業機械を運ぶ船がある。符号が似ているだけで、乗員名簿は残っていない。
「一緒に問い合わせてもらえますか」
莉央は港湾保安の久住律へ頼んだ。古い船籍票には別の港の登録番号があり、律はその港の記録を取り寄せた。返ってきたのは半分欠けたデータだった。
正体を確かめられないまま、船が通った可能性のある航路だけが浮かんだ。赤色反応の観測範囲と重なっている。莉央はその図を評議会へ送ったが、生存と書かなかった。
保安室では港の古い入港写真を何枚も照合した。船体の塗装は修理で変わるが、推進器の根元の形には違いが残る。律は可能性を三段階に分け、画像に印を付けた。写真を送った元整備員は「うちの船なら、右舷の板が一枚違う」と教えてくれた。その違いは今の画像では判別できない。莉央は元整備員の連絡先を記録し、追加資料が届いたら改めて確かめると伝えた。港の記録係へ問い合わせる仕事は続く。誰かの期待で、形の似た船を同じ船にはできなかった。
写真の撮影時刻は港の古い時計で表示されており、現在の標準時と少しずれていた。莉央は換算値を添え、元の数字も保存した。小さな誤差を消したせいで、別の船の記録と混ざるのを避けたかった。
夕刻、貨物船の元整備員から古い写真が届いた。羽白の埠頭が写っている。船影の一隻に同じ形の尾翼があった。莉央は画像を拡大してから、似ていることと同じであることの違いを覚えた。




