発着場の雨
瑞帆六の輸送港では、薄い雨が続いていた。賀来冬至は荷受けの係員へ、冷域九へ送る計測器を水に濡らさないよう頼んだ。密閉箱の外側に、古い住所が印刷されている。
「これは灯標七行きの伝票ですね」
係員が指摘した。賀来は物流路を確認した。物資は直接冷域九へ向かわず、灯標七の補給便を経由する予定だった。宛先は一か所でも、運ぶ船は三隻に分かれる。
雨に打たれる貨物列の向こうで、移住希望者が旅券の確認を受けていた。瑞帆六はまだ前線ではない。それでもほかの星系から来た人たちで港の宿泊施設は埋まっている。
賀来は到着時刻の不確かさを知り、計測器の電池を外して梱包し直した。保存中に放電すれば、冷域九で使えない。取扱書には現地での再装着手順を添えた。
港の倉庫では、瑞帆六で暮らす家族が羽白の親戚へ送った荷が返送されていた。配送先との接続を失ったためだ。賀来は係員に頼まれて、宛先の書き方を調べた。通信不能と死亡は違う。貨物を廃棄せず保管できる期限を確認すると、少しだけ延ばせる余地が見つかった。箱の中身を開けることなく、返送の経緯を記録した。積荷を送り出した貨物船の船員も、行き先が一つではないことを知っている。雨音の続く港で、届かない荷物にも保管場所が必要だった。
雨が小降りになると、岸壁に積まれた箱の番号が読みやすくなった。係員が濡れた帳簿を乾かしている。賀来は自分の荷だけでなく、次の船に積む医療用品の箱も雨よけの下へ運んだ。
貨物船は雨の止まないうちに出港した。賀来は手袋に残った水滴を払って研究所へ戻る。海の近いこの星でさえ、遠い地下に送れる水には限りがある。




