廃材の見分け方
灯標七の造船区画で、音羽叶芽は傷んだ輸送艇から取り外した部材を並べていた。新しい艦を造れる資材はほとんどなく、古い物を安全に再利用する技術が必要になっている。
「形が合うなら使えませんか」
若い整備員が冷却管を持ち上げた。叶芽は製造番号を探した。外見は同じでも、内部の耐圧仕様が違う。以前、規格を取り違えて装置が壊れた記録があった。
使えない部材を捨てる場所も足りない。叶芽は検査済み、不明、危険の三つへ分ける棚を作った。急ぐ作業員が不明品を持ち出せないよう、札の色を統一した。
冷域九からは採掘管の加工相談が届いている。彼女は瑞帆六の技師と図面を照合し、熱試験を行うための計測方法を返信した。修理できるとは保証しなかった。
夕方、別の工場から交換用の絶縁材を分けてほしいと頼まれた。叶芽は在庫表を示し、必要量の半分だけを渡した。残りは病院船の設備修理に使う予定だった。
不明品の棚を作った翌日、別班が壊れた隔壁を持ち込んだ。溶接すれば荷室の仕切りに使えるが、放射線遮蔽材としては再利用できない。叶芽は用途を限定した札を書き、取り扱う者の署名を求めた。若い整備員は面倒そうにしたものの、病院船の修理班から同じ番号の部品を求められ、間違えずに渡すことができた。工場の壁には失われた星系の船名が書き足されている。整備士たちはその下で、名前を知らない乗客を運ぶための道具を今日も直していた。
危険の棚から部材を持ち出す時には、責任者の立ち会いを必要とすることにした。叶芽は作業を遅くする規則だと承知していた。それでも、誰かが知らずに使ってしまうより確かだった。
棚の奥に、小さな新品のボルトが一本残っていた。叶芽は数を記し、次の作業のため保管した。




