砂の下の番号
冷域九で津久井怜は、地下居住区の一角に閉じ込められた保管庫を開けるかどうか迷っていた。そこには採掘施設の古い資材があるはずだった。扉の前には砂が積もり、番号だけが読める。
「中の空気は使えるんでしょうか」
柴野誠が聞く。津久井は保管庫を居住区へ直接つながないよう指示した。圧力も内部の成分も不明のまま開ければ、近くの人を危険にさらす。
整備員は細い測定管を差し込み、まず内部の酸素濃度を調べた。呼吸できる空気はない。しかし壁材と冷却管の予備品が残っている可能性が出てきた。
津久井は使える人員を数えた。避難艇の修理に三人、換気装置に四人、保管庫へ回せるのは二人だけだ。作業は交代で進めることになった。
扉を開けたのは暗い作業時間の終わりだった。中には採掘機の脚と、古い部材の箱が並んでいた。必要な管はなかったが、艇の固定具に転用できる金具は見つかった。
扉の向こうの工具箱からは、使用者の名前を書いた小さな札が見つかった。津久井はそれを持ち主不明の遺品として保管し、工具だけを台帳に載せた。まだ別の星系に移動して生きている人がいるかもしれない。施設の古い図面には、保管庫の横を通る非常管路が描かれていた。しかし現物は塞がれている。掘り返せば粉塵が地下へ入る恐れがあり、今日の作業範囲から外された。柴野は使えた金具の強度を記し、管路には封印の札を貼り直した。
保管庫を開けた職員は、見つかった部材の数を二度確認した。必要なものが一つでも増えれば心強い。しかし棚の隙間には粉塵が溜まっており、掃除にも水が必要だった。津久井は清掃の方法を相談した。
柴野は一つずつ寸法を測り、番号を書いた紙を貼った。未使用の品も、そのまま安全とは限らない。保管庫の扉を閉めたあと、津久井は砂を払った番号を新しい資材台帳へ記した。




