交換できない席
『星渡』の浦上柊は、改装中の貨物船の座席配置に手を入れた。冷域九へ第三便を出すとしても、病人を横に寝かせる場所が足りない。通常の旅客規格では認められない窮屈さだった。
「座席を増やした方が多く乗せられます」
輸送係の提案に、医療担当者が反対した。立ったままでは乗せられない人がいる。浦上は互いの計算を並べ、通路の幅を測り直した。
変更で一列分の席が減った。代わりに固定できる寝台が二つ増える。船の厨房を任される春生は、湯を運ぶ通路が残ったことを確かめた。
浅海朔は船団全体の燃料を再計算した。荷重を軽くすれば速く飛べるというほど単純ではない。積み方が偏れば姿勢制御に余計な燃料を使う。浦上は現場の作業員を呼び、図面を床に広げた。
帰還した操縦士たちは、冷域九の格納庫では機体へ横から乗せると教えてくれた。貨物船の乗降口は低い位置にある。簡易の昇降台も必要になった。
船内で寝台を移動させると、床板の下から古い荷札が出てきた。農業機械を輸送していたころの記録で、壁には荷物を固定するための溝が残っている。整備員はその溝が寝台固定具に使えると気づいたが、強度を測り直さなければならなかった。春生は新しい湯沸かし器を据える位置を変えた。自分の仕事より、担架が通れる道を先に残す。浦上は完成した区画を歩き、急に船が揺れた時に誰が何につかまれるかを確かめた。
改装を手伝った乗員は、自分が避難者だった頃、乗り込む段差が怖かったと話した。浦上は昇降台の手すりの高さを一緒に測った。慣れた船員には見えない不便さが、船に残っていることがある。
改装の予定は延びた。浦上は完了日の欄を直し、無理に書き戻さなかった。速く着くために人を傷つけるなら、避難船の仕事にならない。




