名簿の外側
共同防衛評議会の尾関貴和は、冷域九に残る人数の集計が合わないことを報告した。第一便と第二便の乗船記録、現地の施設名簿、病院の資料を足しても、人数が数人ずれる。
「記録漏れなら、数をそろえればいいのでは」
議員の一人が言った。貴和は首を横に振った。数字を合わせるためだけに、人を移動させたことにはできない。冷域九では採掘関連の臨時作業者が別の台帳で管理されていた。
現地へ問い合わせても、返答できる職員は少ない。貴和は確認事項を短くし、姓名と最終確認場所の二項目だけを送った。返信がなければ未確認のまま残す。
書記官の榊原千景は、委員会へ渡す表を二枚に分けた。ひとつは確定した人数、もうひとつは確認中の人々。議員たちは最初、不便そうにしたが、どこが曖昧なのか見えるようになった。
「予算書もこの形式で出しますか」
千景が聞く。貴和は、人数の確かさで必要な水の見積もりが変わると答えた。最低量だけでは現地がもたないこともある。
議場では輸送枠の計算もやり直された。現地残留者が少なければ船を減らせるという意見に、貴和は実数が少ないと確認されたわけではないと答えた。名簿の不足は救援を断る根拠にも、無制限に増やす根拠にもならない。千景は各担当へ確認できる期限を尋ね、返答のないものは空欄とした。議事録には採択された支援内容だけでなく、採択できなかった案の理由も残すことになった。異議を述べた議員も、そこには同意した。
決定された数字を各港へ送る前、千景は出典の欄を確かめた。誤った数字が一度配られれば、遠い星系の計画まで変わる。貴和は一緒に確認し、修正が必要なら必ず履歴を残すよう頼んだ。
二枚の表はひとつに戻されなかった。救援を決める席で、不確かさを消してしまわないためだった。




