まだ残る灯
冷域九からの第二便が霧生四へ入ったとき、川瀬弥生は受入れ台で酸素瓶を数えていた。第一便より重症者は少ない。それでも寝台は足りず、仮設居住棟はもう一度部屋の割り当てを変えなければならない。
「冷域九は全員避難したんですか」
若い職員が尋ねた。弥生は到着報告を見た。まだ人が残っている。六隻は来られたが、七隻目は修理中だ。第三便を出せるかも決まっていない。
「全員ではありません」
彼女は答え、次の受け入れ予定を消さなかった。
冷域九からの子どもたちは給水口の前で、初めて見る港の大きさに目を丸くしていた。一人の少女が小さな紙箱を抱えている。中身は止まった時計だという。
弥生は箱を受け取り、濡れない場所へ置いた。
「直せる人を探しましょうか」
少女は頷き、それから首を振った。
「まだ向こうにいる人がいるの。時計はその人たちが来てからでいい」
彼女は受入れ担当者へ次の当直表を渡した。空いた係留口は一つしかない。弥生はそこへ印をつけた。
少女の時計は壊れたままだが、箱には冷域九の住所札が残っていた。弥生は剥がさず、少女と一緒に預かり票へ署名した。
港の管理室からは、冷域九へ空の酸素容器を送り返せないかと相談があった。弥生は今使える容器の数を調べ、送っても支障のない量だけ確保した。退避してきた人々に必要な水と空気を渡しながら、まだ向こうにいる人の分も考えなければならない。彼女は名簿の最後に『現地残留者あり』と記し、数字が確かでないことも添えた。今日の入港で終わる仕事ではなかった。
弥生は答えを急がなかった。霧生四の夜勤表には、新しい給水と病床の準備が並んでいる。遠い冷域九の誘導灯は、まだ消えていない。




