ここに残る人々
冷域九の津久井怜は、地下避難室の人々を次便へ案内する準備をしていた。全員を運べるだけの座席はない。第一便が戻っても、何人かはまた待つことになる。
「私は最後でいい」
年配の採掘員が言った。別の若者も同じことを口にした。津久井は感謝しながらも、その場で申し出を確定しなかった。
「まず健康状態を確かめます」
重い荷物を持てる人が健康とは限らない。地下の空気が薄くなれば、先に具合を悪くする人もいる。医療担当の判断を入れ、乗る順序を決めることにした。
待つ人々のため、食料と寝台を別の区画へ移した。退避艇の発着で格納庫が使えなくなっても、地下に残る場所を確保するためだった。
津久井は柴野誠へ、施設の鍵と物資の一覧をもう一度渡した。
「もし通信が切れたら」
「換気を優先し、無理に外へ出さない」
柴野が答える。
名簿の修正に時間がかかるたび、津久井は待つ人へ理由を説明した。秘密にしていると誤解されるより、少し遅れても確かな情報を渡したかった。
待機者への食事の配布も続けた。次の便を待つ間、腹を空かせる人が増えれば判断を誤る。津久井は台所にも当直を残した。
医療担当は高齢者だからといって一律に先へ載せる判断はしなかった。元気に歩ける人もいれば、若くても治療が必要な人がいる。津久井は個別に説明する時間を取り、家族が分かれる場合には次の連絡方法を渡した。人々の不満がすぐに消えるわけではない。それでも待つ理由を知らされないまま扉の外に残すことだけは避けたかった。
津久井は頷いた。人を送り出す指揮と、残る人を守る指揮は同じくらい難しい。格納庫の扉が開く音を聞きながら、彼は新しい乗客名簿を読み上げ始めた。




