無人機の沈黙
霧生四を出た補給器が、冷域九手前の中継点で沈黙した。浅海朔は通信断を受けても、自動帰還の指令を重ねて送らなかった。機体が故障しているなら、命令が届かない可能性がある。
「予備機を出しますか」
乗員が訊く。朔は停留予定時間を見た。まだ規定より短い。中継灯がずれているため、機体が位置を確認しているだけかもしれない。
数時間後、短い位置報告が届く。補給器は故障した標識の手前で待機していた。残る燃料は十分だが、進路を確かめられない。
朔は手動の座標を送った。機体がそれを受け取るまで、管制室では誰も話さなかった。
やがて通信が戻る。進路は補正され、冷域九へ向かう準備が整った。だが赤い反応の最新図を見た朔は、すぐに発進を許可しなかった。
「送ることだけを目的にしない」
彼は言った。到着後に物資を取り出せる場所がなければ、補給器はただ危険な宙域に残るだけだ。
霧生四の通信係が冷域九の応答を受けると、朔はそこへ着陸予定の時刻を送り返した。守れない時刻であることも明記した。現地の人が待機する時間を少しでも判断しやすいようにしたかった。
格納庫の床を歩く避難者が滑らないよう、着地点の周りへ簡易柵を設置するよう頼んだ。現地の設備の限界も考えた。
補給器の着地点には、古い採掘機の残骸があるかもしれない。柴野からの通信を受けた朔は、接近前に小型の探査球を放つよう設定した。着陸を少し遅らせても、機体を壊さず物資を渡すほうが大切だ。受け取り側の位置も確かめ、地下避難室から遠すぎないことを確認した。冷域九との通信が途切れるたび、朔は画面の小さな受信灯を見つめていた。
冷域九の柴野誠へ、受け取り場所を照会する。返事は『旧格納庫を使用可能』だった。朔は地図に新しい着地点を加えた。




