三枚の救難図
霧生四の監視所に、冷域九から三枚の救難図が届いた。描かれている避難口の位置が、それぞれ違う。秋元莉央は最初に発信時刻を比べたが、古い順とも新しい順とも決められなかった。
「全部間違っているんでしょうか」
通信士が言った。莉央は図の署名を見た。作成したのはそれぞれ別の作業班だ。避難口自体が改修されてきた可能性がある。
彼女は冷域九の柴野誠へ、現在使える扉だけを返してほしいと短い照会を送った。返信は遅れたが、三つのうち二つが使えるという情報が来た。
残る一つは、以前の採掘事故で封鎖された通路だった。図を知らずに使えば、避難者が行き止まりへ向かってしまう。
莉央は修正図を作り、救援に参加する船へ配った。ただし現地の構造を直接確認したわけではないと明記した。
退避艇に乗る人々が同じ図を見るため、印刷用の簡易版も用意した。古い通信装置では複雑な地図を開けないことがある。
図を受け取った船長の一人が、危険区画の境界について質問した。莉央は確実に言える範囲だけ答え、残りは現地の通信が届いたら更新すると約束した。地図には空欄がまだ多かった。
古い図を消さないよう注意する文も加えた。更新が届かない人は、前の図で歩くしかない。
避難図の更新に合わせて、莉央は通信手順も書き直した。現地が答えられないほど長い質問は送らない。まず扉が開くか、次に通路が使えるか。少ない言葉で必要な情報を得る。返信が一つ届くたび、地図の灰色が少しだけ減る。彼女はその変化に安心しすぎず、更新時刻を明記した。避難者が通るころまで同じ状況だとは限らなかった。
仕事を終えると、莉央は三枚の元の図を保存箱へ入れた。使えなくなった通路の情報も、どこで間違いが生まれたかを知るために必要だった。




