第5話:波乱万丈な入学式
新入生代表からの挨拶は強制終了となり、入学式が終わったから、これから教室に向かうこととなった。
四つの校舎に囲まれた中庭で、煉瓦の道は桜の花弁で覆われている。
それにしてこの学園は広い、ちょっとした都市と同じくらいの学堂なんて聞いたことがない。
「ハッハッハ! にしてもおもしれぇなあの魔女」
「すごいよあの子!絶対強い!」
気疲れした僕とは対象的に、2人は興奮している。
(この2人強いな…)
しかしノーチェの言葉には共感する。僕は魔法をかじってる程度だが、星雲セイラは間違いなく、学園トップクラスの魔法使いだろう。
魔力が高いとはベクトルが違うような、生まれ持った才能に似た物だろうか、明らかに個人の努力で到達できる領域を超えている。
(まぁあんな頭のおかしい人とは極力関わらないほうがいいな。それはそうと、まずは教室に行かないと。たしか僕の教室は…)
周りを見渡していると、人集りが目に入った。
十字路の中央あたりだろうか、男女の怒声が耳に入る。
「ぶつかって来たのはそっちでしょう!謝りなさい!」
「うるせぇな、ちびが。そっちこそ謝れよ」
片方がドレスの様なセーラ服を来た女子生徒。
もう片方がガラの悪そうな大柄な男子生徒。
「なんだ喧嘩か?」
「あんな小さな子相手に、みっともない」
ノーチェは純粋な正義感から、アルバはワクワクした様子で喧嘩を止めようとしているようだ。
確かにこの光景は許せない。
ガラの悪い男子生徒の身長は180近く、こっちはだいたい168くらいと身長差はあるが、そんなのどうでも良い。
女子生徒を庇うように前へとでる。
「キミ、もうそこまでだ」
「あ゙?なんだてめぇ」
男子生徒が僕を見下ろす形で睨む。
それでも屈せずに言いきってやった。
「その子は困っている。これ以上は容赦しない」
「てめぇ調子に乗りやがって」
一触即発だ。この光景を面白そうと思ってか、ガラの悪い男子生徒が4人寄ってきた。
争いごとを嫌う方だが、だからこそ、この光景を見過ごせなかった。
「庶民風情が私に恩を売る気?言っておきますけど、こんな雑魚相手私だけで充分よ」
さっきの女子生徒が不良を煽った。
黄色みがかかった白く長いツインテールに、ツリ目の気の強そうな銀眼の少女。身長は150で童顔と幼い見た目をしている。言葉使いや雰囲気からして、位の高さが伺える。
挑発された不良達が、貴族の少女に寄って詰める。
「てめぇ、世間知らずにも程があるだろ、そう言うやつはな、真っ先につぶされ、…」
「《風の衝撃》」
不良が言い切る前に、少女が手を突き出して魔法を唱え、放った。
「ぐぇぇ!」
大柄の不良が2メートルほど吹き飛ばさせる。
「てめぇ!」
不良2人がメイスを取り出し、殴りかかる。
攻撃するより先に、少女が動き出した。
「《岩の魔弾》」
少女が両手を不良2人に照準を合わせ、展開した魔法陣から石が放たれる。
矢の様な速度の石が、メイスごと不良2人を吹き飛ばした。
不良3人が一気に…。
(3人?…っ!)
最後の不良が少女の背後目掛けて斬りかからんとしている。
「危ない!」
間に合わない、そう思っていた。
しかし不良が攻撃を仕掛ける前に、少女背後の地面から魔法陣が展開された。
魔法陣から岩の巨腕が姿を現し、不良の足に掴みかかる。
「ぎぁぁ! たすけてぇ!!」
巨腕に掴まれた不良は情けない声を上げている。巨腕は不良を一通り振り回した後、地面に叩きつけた。不良はギリギリ気絶で済んでるのは幸いというべきか。
「余計よ、ガディ。これくらい一人で…」
呼びかけに反応してか、巨腕は引っ込む。
(なんだあれ、召喚魔法…?)
無詠唱で?しかもあれほど強そうなゴーレムを…?。
高貴な少女が髪を靡かせ、スカートを払い終わると、こっちに冷たい視線を向ける。
「で、庶民が何の用ですの?」
一応助けようとしたんだけど…。
アルバはいつものテンションで話しかける。
「おめぇ、強いな!見たところ貴族っぽいが」
高貴な少女はさと当然と言わんばかりの表情を見せる。
「当然よ、私はドミヌワイス家の次期当主。エーデル・ドミヌワイス。あんな貧民風情、私の敵ではないよ」
口調からも、確かに高貴な人間だと伺える。しかもさっきから見下した口調が目立つ。流石のノーチェもいい気分ではないようだ。
「ちょっと、まずはお礼を言うべきじゃない?一応助けようとしたんだから」
また空気がピリ付いた。ノーチェの額には青筋が浮かび上がっている。
「庶民如きにお礼を言えと?別に貴方達が助ける必要は無くてよ」
「あんたねぇ…」
まずい、仲裁に入らないと。
「2人共落ち着いて、一応僕たちの助け無しで彼らをたおしたんだから。それに問題も解決したし、結果オーライでしょ?」
「…リトが言うなら。今回は見逃して上げる」
「見逃してあげるのはこっちだと勘違いしないでよ」
ノーチェがエーデルに掴みかからんとしていると、突然爆発音が響いた。
――ドカーーーーーン!
三階の教室からだ。
「え!?なにが!?」
周囲も驚いている。
「あそこって確か特待生の教室だよな」
「なんで爆発…?一瞬魔法陣が見えたから、魔法?」
他の生徒も教師も突然の状況で驚いている。
教師の何人かが教室へと向かった。
「まったく、今期は問題児が多いですこと」
エーデルが呆れた様子で、魔法陣から石の人形を取り出した。2メートルくらいの、《《ゴーレム》》だ。なるほど、無詠唱でゴーレムを召喚出来たわけだ。
「ゴーレム?」
「そう、私は傀儡技士なの。さぁ行くわよメアリー」
「では、ご機嫌あそばせ」
上品にお辞儀し、ゴーレムと共に何処かへと消えた。
入学早々、ここでの暮らしは波乱万丈だと、予感せざる終えなかった。
爆発について後に知ったことだが、星雲セイラがからかってきた生徒を制裁しようとして、うっかり教室を吹き飛ばしてしまったからとのこと。怪我人がからかってきた生徒だけなのが、幸いと言うべきか。
(やっぱり星雲セイラとは関わらないでおこう)
仮に今のキャラ達の魔力量1〜100で数値化させるとこんな感じ
リト :15、同年代の魔法戦士と比べれば少ない
ノーチェ:30、普通
アルバ :10、戦士としてだから普通
エーデル:75、大人でも一般が50だからかなり高い
セイラ :2000、規格外




