第4話:いざ、ジェネレシア学園へ
竜の襲撃は王国からの救援の馬車が来たおかげで事なきを得た。
ノーチェの治癒魔法は効能が高く、おかげで怪我は全て治った。
(それにしても疲れた、まさか登校の途中でモンスターに襲われるなんて…)
今はおにぎりを頬張っている銀髪の青年―アルバ・ミスタードと、魔力の使いすぎで疲れて眠ったノーチェと馬車に揺られている。
「にしてもオメェ、すげぇな」
唐突にアルバが僕にそう賞賛した。
「そう?僕の攻撃は殆ど効果は無かったよ」
「あの雷はかなり効果あったけどな。それに戦いの中でも冷静に分析して、的確に指示を出したじゃねぇか」
地竜の鱗は雷に弱いから、大したことはない。むしろ飛竜2体を瞬殺したアルバのほうが凄いと思う。
「にしてもあの蜥蜴強ぇな。あの灰色の騎士が来なかったら死んでたかもしれねぇ」
確かにあの騎士はすごく強かった。
師匠から聞いた「アスガルスの騎士は皆、地竜の首くらい簡単に斬れる。」と言うのは、嘘偽りもなかったようだ。
「いや、俺に限ってそんなこと無ぇか。ガッハッハっ!」
凄い自信。まぁあれほどの強さなら納得。
「それにしても、ありがとうアルバ。アルバが居なかったら、助からなかったよ」
灰被りの騎士から聞いた話によると、なんでも今日は幾つもの馬車が魔物の襲撃を受け、何人もの生徒と護衛が亡くなったという。入学前の洗礼にしては恐ろしい。自分もその犠牲に遭ったかもしれないと思うともっと恐ろしい。
「気にすんな、ちょうど戦いたくてウズウズしていたもんでな。だが、俺もアンタに助けられたんだぜ?」
「そう?戦力的に僕が居てもあまり変わらないと思うよ」
「オメェの指示が無ければあそこまで戦えなかった。俺はすぐに突っ込んじまうからよ、オメェとは相性が良いな」
アルバが僕に顔を近づけた。
「決めた! 今日からオメェは俺の相棒だ」
「相棒!?」
「そうだ相棒。嫌か?」
「ううん、初めてなんだ。外の人の友達が出来るの。よろしくアルバ」
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しばらく馬車に揺られた後、アスガルスが見えた。巨大な湖の上に建つ中世様式の巨大な都市は、華やかで活気に満ちていて、理想郷とも呼べる。都市の中央に堂々と建っている象牙の様な純白の城は、神話に登場する神々の住居の様。
やがて馬車はジェネレシア学園に到着した。
中央の城と引けを取らないほどの規模であり、小さな都市だと錯覚される。中央には時計塔、小さめの塔が4本、それらを繋げるように建物が建っている。桃色の木々―桜が乱れる様に散り、花弁が桃色の絨毯をつくっていた。近代的で均等な建築様式は、荘厳さと真新しさを感じさせ、王国内でも特に異質だった。東の方向には大きな講堂が建っており、そこで入学式をやるそうだ。
今はその講堂で座って待っている。
講堂はとても広く、貴族御用達の歌劇場よりも大きいかもしれない。
学園の建物自体に驚いたが、それよりも衝撃が強かったのは、亜人が多かったことだ。オーガ、エルフ、魔女、獣人…、半数以上の生徒が亜人種族。
その事実に、若干身体が強張ってしまう。
(亜人は友好的な人が殆どなのは、頭では理解できてるんだけど…)
人間以外の生物はどうしても魔物を彷彿とさせてしまう。こんな自分に嫌気が差す。
(それにしてもみんな強そう。僕もあれくらいに強くなれるのかな)
「いや〜、どいつもこいつも強そうじゃねか」
「ここがジェネリシア学園!
すごいなにあの獣人! あれって…、まさか龍人!! すごい!」
不安に駆られている僕とは相対的に、2人はとても楽しそうだ。
(僕もあれくらい楽しめたほうがいいよね)
せっかく入学できたのだから楽しむべき、とは言っても入学早々トラブルに巻き込まれたのだから、そんな余裕は無い。
新入生が全員揃ったようで、入学式が始まった。
最初に始まったのが、学園長代理―カルメーン・イグナルスの挨拶。
豪奢な藍色のローブを身に纏っており、フードを深々と被ってるせいで顔が見えない。まるでローブそのものが自我を持って動いているような、不思議な雰囲気を感じる。声も平坦で人間かどうか、そもそも生物かどうかすら分からず、身にまとった神秘的な雰囲気に目を奪われて話の内容が入ってこなかった。
「――さて次は、新入生からの御挨拶です。新入生代表―星雲セイラ」
新入生代表、それが意味する言葉とはつまり、1年生で最も優れた生徒であると言うこと。
周囲もざわついている。
しかし静かな喧騒は、新入生代表が台へと上がったタイミングで静まった。
魔法に疎い僕とアルバですら圧倒されるほどの魔力を、彼女から感じっ取ったのだ。
それこそ、人類の最高戦力にして英雄の領域―Sランク冒険者に匹敵するほどの。
2等星のような水色のサイドテール、雪のように白い肌に華奢な身体つき。フリルの付いた短いスカートと肘丈までしかないマントには、幾つもの星座が描かれており、他の者よりもデザインが凝ってある。
それだけなら可憐な少女の姿であるが、彼女が人外である証拠は瞳にあった。
星空のように輝く眼には、五芒星型の瞳が一等星かの様な金色の光を放っている。
魔女の三角帽子を小さくデフォルメされたカチューシャからするに、種族は星の魔女だろう。星を操る魔法、《星々の神言》を操れる唯一の種族。しかし星の魔女の瞳は普通の形のはず、特異体質なのだろうか。
沈黙に包まれた講堂の中、星の魔女―星雲セイラが口を開く。
「やっほー!星の魔女の天才魔法少女、みんなのアイドル、セイラだよ☆」
可愛げたっぷりに舌を出してウィンク、ピースサインで、可愛さ満載の挨拶を、厳粛な講堂で実行した。
教師と校長代理が強張っている。顔が無いし肌もないのに、汗をダラダラとかいてることが分かる。
こんなとこでふざけた挨拶をするなんて誰が予想したものか。他の新入生も固まっている。
尚、ノーチェは目をキラキラとさせて、アルバはこいつおもしれぇと爆笑してる。
●星雲セイラ
種族:星の魔女
天真爛漫を絵に描いた様な美少女。見ての通り破天荒で頭がぶっ飛んでるが、これでも作中の強さはトップ10に入るほどの実力者。




