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閃光の勇者  作者: バジルソース
第1章:小さき光よ、蒼星を目指せ
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第24話:美人白命 (2)




「ところで、ミスタードとキラはどこにいますの?」


 見渡す限り、部屋にいるのは今話している2人だけ。あの2人にも助けられたのだから、お礼が言いたい。特にミスタードにはきつく言い過ぎたのだから、一言でも謝らなければ。


「アルバは重症だから、まだ治療を受けてるよ。キラは今日の朝…、ノーチェと同じタイミングで目覚めたらしい」


「アルバ大丈夫かな、リトと一緒に見に来たけど治療中で会えなかったし……」


「幸い致命傷では無いらしいから、回復するのを待つしないね」


 それを聞けて一安心だった。

 あの頂点捕食者相手に死なずに済んだだけで、幸運といえる。


「そういえば、アベンチュラは何時ごろに目覚めたのかしら?」


「昨日の夜くらいに目覚めたかな。まぁ、その後は先生達に無茶苦茶怒られたり、事情聞かれたりして大変だったけど……」


「……その事情って、どこまで答えましたの?」


「昨日のこと、話せるだけは話したかな。流石に皇帝豪熊と戦った話は信じてもらえなかったけどね」


 アベンチュラはそう言って苦笑いを浮かべる。

 

「その、ガディのことは話しましたの……?」


「ガディ? あのゴーレムのことなら話してないけど?」


 その言葉を聞けて、思わず安堵(あんど)のため息がでた。

 

「エーデル?」


「気にしないで、出来ればガディの力を知られるのは面倒なだけですの」


 捜索されている訳では無いとはいえ、国家機関である学園の目に入るのは、色々と不味いことになる。

 ある程度察してくれたのか、黙ってくれたのは本当にありがたい。


「……そういえば、聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」


 アベンチュラがそう切り出した。

 その内容はだいたい予想がつく。


「もしかして、その為に訪ねてきましたの?」


「え? 普通にお見舞いしに来ただけだよ? リトそうだよね」


 スエーニョが嘘をつく人間には見えないから、そうなのだろう。


「で、その聞きたいことはなんなのかしら?」


「エーデルって、その……、身体が弱いの? もしそうだったら、昨日は無理をさせてしまったから、謝りたくて…」


 それは予想外だった。昨日は無理をしたのは自分からだったし、指輪が取れたのは事故だったから、アベンチュラは何も悪くはない。

 それを理解していないのか、それとも分かった上で責任を感じているのか、どちらにしろバカで律儀だ。


「答える前に、少し聞きますわね。聞きたいのはそれだけかしら?」


「あのゴーレムのことも気になるけど、秘密にしたいことなら何も聞かない」


「アタシもエーデルちゃんのこともっと知りたいけど、言いたくないならいいよ?」


 そこまで気遣う必要は無いというのに。

 確かに話して心配されるのは嫌だし、余計な世話は焼かれたくない。しかし2人も知らないまま気遣われるのは、もっと嫌だ。


「余計な気遣いだわ。貴方達との付き合いは短いけれど、それでも信頼に値すると考えていますもの。少し長くなるけれど、それでもよろしくて?」




―――――――――――――――――――――――



 アレイフ大草原の南西に位地する都市国家アンティグア。ドミヌワイス家はそこに居を構える、魔女の血を引いた学者の家系であり、私はその家で生まれた。

 父の名はカレッジ、母はミューレと言い、2人とも優れた錬金術師と考古学者である。

 優れた才を持ち合わせても、それに驕(おご)らず努力を惜しまない二人を、心の底から尊敬している。

 

「間違いありません、エーデルお嬢様は魔蝕病(ましょくびょう)です……」


 暖炉の火と燭台(しょくだい)が照らす応接室にて、かかりつけ医がそう告げたのは、5歳の頃だった。

 覚悟を決めていた父は拳を強く握りしめ、母はハンカチを濡らしていたことを、よく覚えている。

 2人のあの悲痛な顔は、二度と忘れないだろう。


「そんな、この子は治るのですか……? 先生なら、アンティグアの名医である先生なら、治せますよね……?」


 隣に座っていた父が、そう訴える。その声は震えていた。

 魔蝕病―魔力に身体が激しい拒否反応を起こす病であり、魔力耐性が極めて低い体質に起こる。

 呼吸器官や運動機能に甚大な損傷が起き、長時間で大量の魔力に晒されると、最悪死に至る。


「通常ならば治癒は可能です。ですが……」


「難病なのは聞いていますわ、ですから幾ら治癒費が掛かろうと構いませんっ! ですからお願いします!」


 言葉を渋(しぶ)る医師に、母がそう懇願(こんがん)し、頭を下げる。


「お金の問題ではありません、エーデルお嬢様は事例が特殊なのです。お嬢様が魔養人(マギレント)であることは、ご存知でしょう?」


 魔養人(マギレント)とは、魔女の血と交わりのある家系から稀に生まれる亜人種。生まれつき高い魔力と魔法行使能力を持ち、そして魔女固有の魔法をごく一部だけ扱える。

 それによって私(わたくし)は空間拡張魔法の異次元貯蔵庫(ディメンションバンク)を扱え、ゴーレムを幾つも携帯できる。

 

「加えてエーデルお嬢様は生まれつき祝福(ギフト)を授かっており、魔力量も中級魔法を扱えるほどです」

「症状の重さは魔力量に比例します。身体から漏れ出る僅かな魔力ですら毒なのです。そのため、微弱な魔力量で耐性を付けさせる方法では悪化する可能性が大いにあります……」


 治癒は完全に不可。その事実に両親は顔を青ざめていたことをよく覚えている。

 

「……本当に、どうにかならないのですか…?せめて外に出られる様にしたいんです、どうか、お願いします」


 父が深く頭を下げた。


「もちろん、我々も最善を尽くすつもりです。ですので、症状を抑えるためにも外出はなるべく控える様にしてください」



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