第23話:美人薄命 (1)
前回のあらすじ!!
リト:魔力と闘気欠乏
ノーチェ:肋骨、右肩骨折、魔力欠乏、内臓損傷
アルバ:両脇腹重傷、出血多量
エーデル:重度の発作による出血多量、左の小指と薬指
欠損
キラ:四肢完全骨折、両眼欠損、出血多量
リト以外重傷!! 以上!!
窓から差す光に照らされ、重い瞼を開く。
木製の天井と、レトロチックなランタンが目に入る。
(ここは…どこかしら?)
長く寝ていたせいか、身体が重い。
上体を起こし、周囲を見渡した。
並べられた純白のベットとカーテン、輸血台、棚に敷き詰められた薬品らしき瓶から見るに、ここは医務室らしい。
(確か私達は、暗森林にいて…、皇帝豪熊に遭遇して…)
指を斬られて指輪を失った以降はよく覚えていない。ふと指を見ると、くっついていた。しかし包帯が何重にも巻かれており、動かすことは出来ない。
さらに左手首には点滴チューブが打ち込まれており、見上げると2つのボトルが吊るされていた。血と、何らかの薬品が点滴筒を伝っている。
(そうだ、ヘンゼルとピーター!)
記憶が次第に戻り、ゴーレムが破壊されたことを思い出した。急いで魔法陣の中を確認する。
(良かったわ、核は無事みたい)
身体は無惨に破壊されているが、時間をかければ修復できる範囲内ではある。
(そういえば、アベンチュラ達は無事なのかしら…)
その時、ドアが勢いよく開かれた。
「エーデルちゃーん! 元気ー?」
大声で私の名前を呼んだのは、ノーチェ・スエーニョだった。
「ノーチェ、他の人がいるかもだから声抑えてよ」
アベンチュラがそう注意して、扉を静かに閉める。
「ここに居るのは私だけですわ、でももっと声を抑えてくれます?」
元気そうな2人の姿に、胸を撫で下ろす。
見た所目立った傷もないようだ。
「ところで、何の用ですの?」
「お見舞いだよ、ちょうど午前の授業が終わったからさ」
「私の心配をする前に、まずは自らを案じたほうが良いんじゃないかしら?」
「も〜エーデルちゃん、素直じゃないんだから。心配してくれてるならそういえばいいのに」
スエーニョはそう笑って、私の頬を突っついた。
「うっ、うるさいですわねっ!」
いつもこの様に誂われるのだから、調子が狂う。
「アタシはすっかり、この通り!」
そう言って一回転したかと思うと、飛び跳ねてバク宙を披露した。そんな事しなくても、声の大きさで分かる。病み上がりで少しは落ち着いてると思った自分が馬鹿だった。
明るく笑う彼女を見ると、こっちまで頬が緩みそうだ。
「なーにがこの通り、だよ」
アベンチュラがスエーニョそう怒り、腕を鷲掴み、軽く締め付けた。
「痛たたった!」
「腕の骨治ったばかりなんだから、そんな無茶な動きしたら駄目でしょ。それに昨日だって、全部の魔力を僕に使っちゃってさ、本当に無茶しすぎだよ」
「だって、自分を回復するほどの余裕は無かったし、それにリトもしんどそうだったから」
本当にこの2人が仲が良いなと、つくづく思う。
お互いのことをここまで思い合っているんだ、長い時を共にし、相当な苦難を乗り越えてきたことが容易に想像できる。
「自己治癒はそこまで大変なのかしら?」
「治癒魔法ってただ魔力を使って再生って感じじゃないみたい。相手の再生能力をすっごく強くする仕組みだから、その時に消費されるエネルギーを魔力と自分の体力とかで補うんだって。でも自分に対してだとそれが出来ないから、魔力も沢山使っちゃうの」
「栄養失調を自分の栄養で補えないのと同じことなのね。神の奇跡と謳われる白魔術も、程度が知れますわ」
先の説明から、状況も大体察せる。魔力も微々たる量しか無く、自分も治療できない状況だから、アベンチュラの治癒に使ったのだろう。
「でもおかげでみんなを治療できる余裕が出来た。それについては感謝してるけど、だからって無理しすぎだよ」
「アベンチュラ、それは貴方が言えたことでは無いと思いまして。あの大技も、かなり無茶だと見受けられますわ」
アベンチュラの剣が凄まじい光を放ち、皇帝豪熊に重症を負わせたことを、僅かながら記憶に残っている。
「大技って、【クラージュラム】のこと?」
「クラージュラム、閃光の勇者が愛用した聖剣の名前だなんて、貴方らしいわね」
「ひどいほど名前負けしてるけどね…」
「でもすっごくカッコよかったよ。あの時のリトは勇者みたいだった」
スエーニョがいつもより明るい笑顔を見せてそう言うと、アベンチュラの頭に手を置いた。
「本当に、立ち上がってくれてありがとう」
「僕だけの手柄じゃないよ。みんなが命をかけてくれなかったら、僕は勝てなかった。みんなが僕に勇気を与えてくれたおかげだよ」
恥ずかしそうな顔でノーチェの手を退かしながら、リトが言う。
その言葉に嘘偽りが無いことは、彼の太陽の様な瞳が物語っている。本当に謙虚だ。
「エーデル、あの時僕の背中を押してくれてありがとう。君もいなかったら、僕は立ち向かうことができなかったよ」
恥ずかしげもなく堂々と言えるその純粋さが、とても眩しい。
「よ、よしなさいよ! 私はただ戦意喪失したリーダーの代わりに指揮をとっただけですわ。あ、あんな状況で腰が抜けるなんてまだまだリーダー失格ね」
恥ずかしさのあまり思いもしてないことを口走ってしまった。悪い癖だ。
ましてや恩人に向かって言うことではない。
「分かってるよ、エーデル。これからも頼りにしてるよ」
「ふ、ふんっ」
予想外に全く傷ついている様子は無い。
やはりこの2人はよく似ていると、つくづく思う。




