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閃光の勇者  作者: バジルソース
第1章:小さき光よ、蒼星を目指せ
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第18話:森の王に挑むは5人の未熟者 (3)



 幸い3体のゴーレムはまだ動いており、上位銀熊(ハイシルバーベア)の相手をしている。アイツらに任せれば、俺は皇帝豪熊(ロードグリズリー)へと集中できる。

 

(もう出し惜しみはできねぇ)


 皇帝豪熊の咆哮と共に、【旋風】が襲いかかる。

 もはや見慣れた技だ。

 襲い掛かる猛攻を避け、弾き、皇帝豪熊の懐へと入り込む。


「オメェの力、見せてもらうぜ」


 闘気とは違うエネルギーが刀に吸い尽され、一瞬の脱力感に襲われる。

 刃に彫られた刻印が獲物を捉えたその時、皇帝豪熊の紅い眼球が曇りを帯びた。

 存在しない獲物に翻弄(ほんろう)されて、わざとらしいほどに混乱している。その様はあまりにも滑稽(こっけい)だ。


(魔力を込めるだけで幻覚魔法が使えるなんてな。エーデルの分だ、その腕叩き斬ってやるよ)


 刀に冷気の魔力を纏わせ、全力の一撃をぶつける。

 

「【春寒波】っ!」


―ガキンッ


 霜を纏った刃は、弾かれた。

 

「、!?」


 職員の話が正しければ、影桜は不意打ち時に鋭さが増す。

 だから幻覚にかかり俺が見えていないこの状態こそが真価を発揮するはずだ。

 皇帝豪熊の目を見るが、やはり俺を捉えていない。


(腕が駄目なら、首掻っ切ってやる)


 皇帝豪熊の背後へと回る。


「っ!?」

  

 森の王を横切った瞬間に、死の気配を感じた。

 振り返った先には、王の豪腕が俺を捉えていた。

 

(幻覚を自力で!?)


 迫りくる爪。反射的に刀で受け流す体勢を取った。


―ギンッッ


 刃に激突した爪は軌道が僅かにズレる。


―ザクッ


 軌道のズレた2つの爪は、両脇腹を抉った。


「グッ!?」


 紺色の羽織が赤黒く染まる。あまりの激痛に、立ってるのもやっとだ。

 

「クソっ」


 幻覚魔法は相手との力量差が大きいほど抵抗されやすい。きっと幻覚が効いたのはほんの数秒だけ。

 しかしすぐには反撃せず、俺が背中を見せる瞬間を待っていたのか。

 何故そんなことを一瞬で理解できたのか。

 それは、アイツの下卑た笑みを見れば誰でもわかるだろう。


(足を掬(すく)われたのは、俺の方だったのかよ…)


 怯んだ瞬間、皇帝豪熊の平手打ちが迫る。

 受け流す間も無く吹き飛ばされた。

 

―ガンッ!!


「ヴッ゙!?」

 

 大木に激突したのか、背中に鈍痛が走る。

 気がつけば視界が地面一色だった。

 

(…出血が酷ぇ。無理に動いたら死ぬな、これ)


 起き上がることもままならない。

 トドメを刺そうと、奴が近づいてきた。

 一歩一歩、死が迫ってくる感覚が、鼓動を早める。

 それでも、これはチャンスだ。

 俺が瀕死だと思えば、奴は勝ち誇ってトドメを刺すだろう。その油断に付け狙えば、一発喰らわせられるはず。

 

(そうだ、もっと来いよ)


 奴は俺に顔を近づけ、何度も匂いを嗅いだ。

 心臓を鷲掴みにされているかように、鼓動はより激しさが増す。呼吸も冷や汗も止まらない。

 

(どうした、早く噛みつけよ。その口ズタズタにしてやっからよ)

 

 匂いを嗅ぎ終わると、奴は牙を見せる。

 悦に浸った笑みで口を歪ませ、そしてトドメを刺すこともなく、通り過ぎた。

 

(こいつ舐めやがって!! わざわざ目の前で見逃しやがったな!!)


 完全な敗北。それに加えて情けをかけられた。

 これ以上の屈辱があるか。

 本当に獣とは思えないほど狡猾で下劣だ。

 しかしここで怒りを発露する余裕もない。

 せめて、こんな状況でも出来ることを探らないとだ。


(闘気は…、出血を抑えんのに精一杯か。魔力も精々、幻覚を一回使える程度…)


 ならせめて、仲間の安否だけでも確かめなければ。あらゆる感覚を研ぎ澄ませ、周囲の状況を読み取る。最初に感じとれたのは、喉に絡みつく様な錆び鉄の匂いと、肺に穴が空いた様な呼吸音。


(…病人の血の匂い、…きっとエーデルだな。さっきよりも血が濃くなってやがる…)


 今度は相棒の場所を探った。しかし遠いのか、どこにいるか分からない。


(すまねぇ相棒、後は託すぞ)






 


 

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