第12話:野外実習
◉斉竜
等級:2級
翼を模した鍔の中央には宝玉がはめ込まれており、柄には無数の握り後が刻まれている。聖なる力が宿っており、魔物に対して有効。刀身の芯には竜骨が使われており、魔力への耐久が極めて高い。
元は普通の剣だが、これで竜を倒した時に剣が破損した。その時に竜の素材で剣を打ち直したことで今の姿になった。竜殺しのゼフを象徴する武器として、騎士団の間で語られている。
◉影桜
等級:1級
柄にお経の書かれた包帯が巻かれた、赤茶色の刀。
刀身は刃毀れすることがなく、そして羽のように軽い。
その材質と、東方では国宝として扱われていることから1級に分類される。
とある剣豪が報酬品として貰ったが、1振りで刃毀れしてしまった為に倉庫の肥やしになっていた。
⦿優しき幻死桜
幻影魔法を使用できる。しかし魔力消費が激しく、今のアルバでは対象一人の視界を覆うだけにしか出来ない。
⦿忍の花見
自身の気配を遮断し、敵意を向けられていない間は攻撃力が大幅に上昇する。
春の終わりを告げるように、木々は緑で茂る。
昼休みの庭で過ごす休息も、暑さを感じることが多々増えた頃、僕はそろそろ髪をきろうと考えていたが、ある人によってそれが出来ない。
「ねぇノーチェ、そろそろ次の授業が始まるんだけど」
「まって、もう少しで終わるから」
ノーチェは昔から髪の手入れが好きだ。
村にいた頃も、よく僕の髪に櫛を入れていた。
入学してからは、新しく出来た友達から髪の編み方を教えて貰ったらしく、今みたいに髪をいじくり回されている。
「そんなに髪編みたいなら自分の伸ばせばいいのに」
「だって、髪長いと動きづらいんだもん」
「それは僕も同じだよ、最近暑くなってきたし」
それでも、髪を手入れしている間のノーチェは楽しそうだから、切ろうにも切れない。
「できた!えへへ、すっごくカワイイよリト」
「流石に少し恥ずかしいよ」
雑に結んだポニーテールが、丁寧に編まれた三つ編みになった。ついでにフリルのついた黒いリボンが根元に結ばれている。
「動いてる時に崩れそうだね…」
「だいじょーぶ。結構きつめに編んだから」
そうしていつもの昼休憩を送っていると、アルバが来た。見慣れた笑顔で手を振り、僕も軽く返した。
「おう相棒! その髪似合ってるじゃねぇか」
「うう、そろそろきりたいな…」
顔から火が出そうだ。
「ところで相棒。そろそろ時間だぞ?」
「あれ、もうそんな時間なんだ。ノーチェ、そろそろ行くよ」
「は〜い」
そんなありふれた日常を送り、僕達は中庭を後にする。
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アレイフ大草原の東には、セジリト暗森林と呼ばれる大規模な巨樹林が広がっている。巨大な木々が空を覆う鬱蒼とした森林には日光が殆ど差さず、昼間ですら夜の様に暗い。
そして、入学初めて行われる野外実習がこの森で行われることとなっている。内容は薬草採集、眠妃草と呼ばれる薬草を最低5つ集めることである。
今回は初のパーティー行動であり、メンバーは僕、ノーチェ、アルバ、エーデルの4人。3人の多数決により、パーティーリーダーは僕が務めることとなっている。
「まさかエーデルがパーティー加入を申し込んでくれるなんてね、最低4人だったから助かったよ」
パーティーを決める際、最後の一人をどうするか悩んでいたところを、エーデルがたまたま通りかかったのだ。その時にノーチェが加入を誘い、二つ返事で応じてくれたのは意外だった。
「ドミヌワイス家の次期当主として、手を差し伸べてやっただけよ。有意義な時間になることを期待していますわ」
「よろしくね! エーデルちゃん」
「スエーニョ、今回も考えなしな行動は控えるようにね?」
魔獣暴走事件から、ノーチェはエーデルと仲良くなったらしく、よく髪の結び方や礼儀作法とかをエーデルが教え込んでるそうだ。さっき結んで貰った三つ編みも、エーデル仕込みだと言う。
「あらアベンチュラ、新しい髪型かしら? 意外と似合っていますわね」
「ノーチェが結んでくれたんだけど、動いてる時に崩れそうでさ…」
せっかくノーチェが丹精込めて編んでくれたのだ。髪型が崩れるのが勿体なく感じてしまい、戦闘に集中出来ないのは致命的である。
「心配いりませんわ。その髪留めには髪の形を固定する刻印が彫られているのよ」
「でもこれ明らかに女性物だよね、男の僕に似合うわけないよ」
「貴方、顔付きも体格も女性と遜色ないのだから杞憂よ」
そう言ったやり取りをしながら、一行は森を進む。探している眠妃草には麻痺の作用を有しており、簡単な調合でちょっとした麻酔になる。冒険者にとって身体の欠損は珍しくなく、応急処置としてこの薬が好まれている。
しかし暗くジメジメした場所を好む植物であるから、闇雲に探して見つかるものでは無い。
それにこんな暗い森だと、何処から魔物が襲ってくるかも分からない。だからかいつも以上に緊張している。
―ザッ、ザッ
後ろから、草花を踏む音が聞こえた。
「相棒、きっと魔物だ」
「分かった。みんな構えて」
足音の正体が巨木から姿を現す。
全長は3mほどの、銀の毛皮を持つ熊だ。
赤い目は4人を捉えており、白い牙を覗かせグルグルと唸っている。
「銀熊だ。危険度は3だから、負ける心配はないと思う。毛皮が硬いから気を付けて」
「ならまずは私に任せなさい」
説明を聞いたエーデルが前へと出る。
それを挑発と受け取ったのか、銀熊はエーデル目掛けて駆けた。
「エーデル、君は後に…」
「手出しは無用よ。この距離なら、私の方が早いですわ」
銀熊が次第に距離を詰めるが、エーデルは冷静に魔法陣を構築している。
右手に空気が集中し、圧縮される。
「《風の刃》」
薙ぎ払うような手の動きと同時に、大気の斬撃が放たれる。見えざる刃は空を切り、銀熊の肩を斬り裂いた。さながら達人の居合切りである。
白銀の毛皮が血で滲むと、獣は警戒する様に足を止め退ける。
「後はお願いしますわ」
「え、一回だけ!?」
「魔力の節約よ」
そう言ってエーデルは前線を退いた。いや、魔法使いだからそれ自体は正しいけど。
「おし!後は俺に任せなっ」
アルバが颯爽と駆け出し、銀熊の懐へと潜り込む。
「【桜華突】!」
傷目掛けて刀を突き刺す。銀熊は断末魔を上げて、地に伏せた。
「終わったぜ、相棒」
「すごいや、解体は僕がやっておくよ」
それにしても素早い。危険度4の魔獣をほぼ単騎で制圧するとは。
(戦闘面では僕とノーチェはサポートに回ったほうが良さそうかな。後は目的の薬草さえ見つかれば…)
「薬草、見つかりましたわ」
エーデルの手には、既に眠妃草が握られていた。
「早っ、どうやって見つけたの?」
「広範囲分析で簡単に見つかりましたわ。魔力の宿っている対象ならお手の物よ」
初の野外実習で不安だったリトだが、仲間達の活躍で、緊張も和らぎ始めた。
(今回の探索は、思ったより平和に終わりそうだね)
しかし僕のすることが殆ど無いことに、若干の劣等感を感じ始めるが、リーダーというのはそういう者だとうと自身を納得させて、さらに森の奥へと進んだ。
◯モンスター解説
・銀熊
危険度3
銀の毛を持つ3メートルの熊。硬い毛皮と鋭い爪、さらに鋭い嗅覚を持つ。執念深い性格なため、一度出会ったら執拗に追いかける。雑食で肉や樹の実を食べている。




