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閃光の勇者  作者: バジルソース
第1章:小さき光よ、蒼星を目指せ
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第10話:雷、炎、そして剣と魔法




 桜が散り、葉が芽吹き始めるこの頃。初夏の空気が睡魔を誘い、講義中に眠気を感じることが増えた。

 そのため僕は居眠りを防ぐ方法として、朝早くから体育館で身体を動かすことを入学したてから日課としている。

 適度な疲労は脳を刺激させるという師匠の教えを元に始めた日課であり、このおかげで真面目に講義を聴けている。

 

(まぁ一緒にこの日課を始めたアルバは昼もぐっすりだけれど)

 

 今日はアルバが補習で呼ばれているため、一人で鍛錬を始めている。この時間に体育館を利用している生徒は殆(ほとん)ど居らず、孤独感が体育館の規模相まって強く感じる。寂しさを紛らわすために、鍛錬に集中しなければ。

 今日の相手が、2m半ある鉄人形―ゴーレムである。 

 この訓練用ゴーレムは特別頑丈であり、燃やそうが高所から落とそうが傷一つ付かない。その代わり両腕にはゴム製のクッションが取り付けられており、攻撃性能は皆無。

 その性能から、戦闘の駆け引きを学ぶ為の鍛錬相手というより、技を試し撃ちするためのサンドバッグに近い。


「今日もよろしくね」

 

 物言わぬ鉄人形に軽く挨拶しつつ、白曜の剣(カティスタソード)に闘気を流し込む。

 

「《|魔法付与・雷光《エンチャント·・サンダー》》」

 

 白い石剣は電気を帯び始める。闘気と魔力の反発作用により激しく唸っている。

 反動も、この程度なら慣れたものだ。

 問題はここからだけど。


「《魔法付与・火炎《エンチャント・フレイム》》」

 

 刀身を纏うエフェクトに炎が混じり始めた直後、双方のエネルギーが激しく唸る。


「お、重いっ!」

 

 猛獣を繋いだ縄を引っ張ている様な負担が両腕にかかり、構えるのもやっとだ。振るうこともままならない。

 

―ビキッ、ビキビキッ


 やがて刀身にヒビが入り始めた。

 壊れる前に振るわなければ。


「ぐ、うっ…、はぁ!!」

 

 闘気と魔力で制御を強化し、渾身の力で振るうも、


―バキーンッ


 刀身がゴーレムに届く前に弾け飛んだ。   


「ぐぅっ!…いてて」


 吹き飛ばされるも、咄嗟(とっさ)に受け身を取ったことで事なきを得た。


(…師匠のシゴキに感謝したよ)


 毎日、骨にヒビが入るほど吹き飛ばされていなければ、こう上手く受け身を取れなかっただろう。

 起き上がる直前に、床に目をやる。黒焦げた石屑となった刃の残骸が、床に散乱していた。


「これで、6本目か…」


 新技の犠牲になった剣の数だ。学園で支給される武器は壊れても無償で交換してくれるが、連日で壊した結果、給品部の人に顔をしかめられた。


「また交換して貰わないと…」


 そう思い起き上がった時、背後から声を掛けられた。


「朝から精が出ているね」


 振り返った先にいたのは、白衣を身に纏った赤茶色のオールバックの男性―ジーマ・ジャック教授だった。

 

「ジャック教授! なんでこんな所に?」


「用事でここに寄ったら君を見かけたものでね、少し見守らせて貰ったよ」


 ジャック教授は、床に散乱した白曜の剣を手に取る。刀身は根元から砕かれ、もはや剣として機能しない棒を観察している。


「これは随分と派手に、…雷と炎の魔力、そして闘気を混ぜたのかい?」


「はい…、最高火力の技を練習しているのですが、振るう前に剣が弾けてしまって…」


「精霊の魔力は人間の魔力よりも激しく闘気を拒むからね。それに剣を見た所、流し込まれている魔力と闘気の量がほぼ均等なようだが」


「以前講義で話されたダーイン反応を技に組み込んでみたんです」


「闘気と魔力の量に誤差が少ないほど、反発作用は増大する現象のことだね。覚えていてくれて嬉しいよ」


 そう言ってジャック教授はズレたメガネをかけ直した。


「なるほど、2つの反発作用か。君のセンスには舌を巻くが、ただ全てつぎ込むと言うのは少々短絡的だね」


「ですが、僕は魔力も闘気もみんなより少なくて…。その弱点を補うにはこうするしか」


 模擬戦も幾つか通した結果、自分の基礎スペックは明らかに低い。基礎的な筋トレを毎日しているにも関わらず、素の身体能力はノーチェにも劣っている。


「なるほど。しかしそれをするには、武器が良くない」


「武器…。出力の問題ではないのですか?」


「白曜の剣に魔法付与(エンチャント)できる数は一つまでだからね。そこに闘気と魔力を混ぜようものなら、例え出力を最低限にしても武器は保たないよ」


 元々命を持たない物質は魔力と闘気で消耗しやすく、魔道具は耐久を補強することで解決している。

 特に学園の武具は市場の物より質が良く、見習い用の白曜(カティスタ)ですら鋼に匹敵する。 

 そんな武器ですら、技の反動に耐えきれずに粉々に砕けた。

 

「他の剣ですか、どんな物がお勧めですか?」


 今の武器以上の物が欲しいが、それ以上の強度を持つ武器は高価だし、そもそも武器についての知識があまり無い。


「ふむ、さっきの技を完成させたいなら、竜の素材が使われた物が理想だね。例え君がその技をいくら使っても壊れないだろう。もっとも、中々に貴重な代物だから、入手は困難だが」

 

(竜の素材か…、ん?まてよ)


 ここで少し引っかかった。ついこの前、この単語を聞いた覚えがあったからだ。


「あの教授、もしそれらしき武器を手に入れたら、どこで鑑定してもらえますか?」


 「校内図を貸してみなさい、ついでに使える施設も幾つか教えておこう」




◉ダーイン反応

魔力と闘気の差が均等なほど、反発の力が増幅する反応のこと。これを活かせば少ない魔力と闘気でダメージを出せる。しかし反動が激しいので扱いに注意が必要。



◉魔法付与(エンチャント)

武具に魔力を込めて、一定時間属性を付与する。

込められている魔力を一気に解放することで、高い火力を得る。


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