12:北の屋台広場。
お参りを済ませ、北門から出て大神殿を後にする。
一応出入りは正門である西門を使うのが推奨されているけれど、まぁ北や南の大門から入ってきた人たちはやっぱり北門や南門使うよね。遠いし。
僕も今日は北の大門を利用するつもりなので、北門から出たわけなのです。
僕が北の大門を目指すのには色々理由があるんだけど、一番の理由は朝ごはんを確保するためだよ!
北は食料品を扱ってるだけあって、屋台が多く出てるし質も高いんだよね!特に北の大門近くの屋台広場!あそこはどこの屋台も美味しいんだぁ。
何でも僕が屋台広場を知ってるかって言うと、この三年、慰問の合間合間でちょくちょくヴァリアルには戻ってきてて、その時にお忍びでヴァリアル観光とかしてたんだよね。
流石にヴァリアルは僕の庭!なんてとてもじゃないけど言えないけど、そこそこはわかってるつもりだよ。
ヴァリアルは皇帝陛下のお膝元だけあって活気があっていい街だよ。まぁ、人が多い分問題も多いけれど、兵士さんたちが頑張ってくれてるからね。治安はいい方だよ。
と、いうわけで。僕は朝ごはんを求めて北の屋台広場に突撃します!待っててね、僕の朝ごはん!
大神殿からてこてこと歩いて早半刻。やってきました屋台広場!美味しそうなニオイが広がってるよ!お腹すいた!
この屋台広場のメインターゲットは北の大門を出入りする人たち。商隊だったり冒険者だったり、まぁ街道を移動する人やしてきた人、だね。
ヴァリアルから出ていく前の腹ごしらえだったり、着いてすぐにお腹を満たしたい人たち向けだから手早くささっと食べるものが多い。串焼きとか、分厚いホットサンドみたいなのとか、小さくカットした野菜や肉が入ったスープとか。立ったまま詰め込んだり掻き込めんだりできるものが好まれるんだよね。
他の屋台広場だともっとガッツリしたものとか、座って落ち着いて食べるものが多いかな。パスタとか洋風うどんとか。
周りが農地ばっかりだから小麦粉も野菜も豊富だし、牧場から新鮮なお肉が来るし、北と南にある森から魔物肉を取ってこれるし。ヴァリアルというか、アリアル大陸の食はどこもとても豊かだよ。
まぁ、そうして大量に作って、自分たちが消費する分以外は全部長期保存用の加工をして六大陸に出荷してたからね。戦争中、六大陸は生産に力をまわしてる余裕はあんまりなかったから。
安全圏とされていた後方、今の六国家のある場所では食料生産に力を入れられてたけどね。他の場所は男も女も戦える人は皆前線へ行ってたし、戦えない人は後方に下がって戦闘以外の仕事に追われていたから。どうしても、ね。
うーん、戦争中のこと思い出すとどうしても気分が重くなっちゃうな。やめやめ!今からご飯食べるんだから、ご飯の事だけを考えよう。
僕は気になった屋台をふらふらと回って色々買いこむと、広場に設置してあるテーブルに座って「いただきます」と手を合わせてから食べ始める。早く食べないと冷めちゃって美味しくなくなっちゃうからね!
今回買ってきたのはココケッコという鳥型魔物の焼き鳥と、焼き立てふわふわのパン、それから角切り野菜がたっぷりと入ったコンソメスープみたいなのだ。
ココケッコは鞠みたいにまんまるで獰猛な鶏?飛ばないし卵も食べるよ。養鶏場…養ココケッコ場があるから卵も肉も安定供給されてるね。ただ獰猛だから専門業者がガッチガチに固めて管理してるから、ちょっとお高め。お味はブランド鳥?柔らくてジューシーでとっても美味しいんだよねぇ。
もぐもぐと朝ごはんを堪能しながら、そういえば貨幣のおさらいがまだだったことを思い出す。
この世界の貨幣は大陸ごとに統一されてる。これは魔王が暴れる前からで、大体どの貨幣も同じ価値。
貨幣の名前はそれぞれ大陸の名前からとっていて、アリアル大陸の場合は「アル」という。一アルとか、一〇〇アルとか。
貨幣はよくあるファンタジーと同じで全部硬貨。下から順に鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨。価値としては下から順に一アル、十アル、百アル、千アル、一万アル、十万アル、百万アル、一千万アルとなっている。
硬貨は各国がそれぞれで作っているけれど大陸ごとに規格を統一していて、表面には神様のお顔が、裏には国の意匠が刻印してある。
表面の神様は大陸ごとで異なる。第一大陸なら創造神様、第二大陸なら火の神様、という具合だ。
鉄貨は子供用というか、買い物というかおつかいの勉強用な感じ。割と使えるところが限られる。
銅貨と大銅貨が一番庶民に馴染んでいる硬貨だと思う。支払いは大体銅貨二種類で済ませることが多いね。
銀貨はちょっと大きな買い物とか、中流階級が普段使いする、って感じかな。あとお給金の支払いとか。
大銀貨や金貨になると上流階級が使ったり商いで使ったりで、庶民はあんまり目にすることはないと思う。使い勝手もちょっと悪いしね。貯金用?
大金貨は完全に商い用というか。大店が仕入れに使ったり、貴族が支払いに使ったりとかで、普段使いに向かない。
白金貨はそれこそ国レベルの取引とかじゃないと出番ないよ。一部の商人や貴族が所有だけしてる、ってことはあるね。持ってるだけである程度の信用を得られるから。そういう代物だよ、白金貨って。
まぁ、僕も持ってるんだけどね。白金貨。魔王討伐の報奨金でもらったんだよ。額が大きかったから、記念に取っておこうと思って。とりあえず七大陸の白金貨をそれぞれ何枚かね。もちろん白金貨だけじゃなくて大金貨以下の硬貨もたんまり持ってるけど。
報奨金は別にリリヴァル帝国だけが払ったわけじゃないよ?アリアル大陸の他の国家からも六大陸六国家からも出てるんだ。メインで払ったのはリリヴァル帝国なんだけどね。
だからお金は本当にたんまりあるんだよね。一生遊んで暮らしても使いきれないくらい。これでも色々寄付したり投資したりしてかなり減らしたんだけどね…。
ちなみに、どこの世界にもマニアというのは存在しているらしく、硬貨の収集はわりと知られた趣味の一つだったりする。いざとなったら実際に使えるしね?
硬貨によっては本来の価値以上の値段がついているもの珍しくない。特に三〇〇年前に亡んでしまった国の硬貨はね。希少価値が高いから。
五〇年前の猛攻によって亡んでしまった国々の硬貨はそれこそ国によって価値が違う。
亡んだといっても実際には生き残りが多く残ってるし、その時にお金とか国宝とか家宝とか、そういうのは持ち出せた国も多いからね。実は復興するのは難しくないんだよ。土地を魔王に奪われただけ、って感じだから。
まぁ、どうしようもないほど人が死んでしまった国も多いんだけどね…。
話を戻して。
貨幣価値としてはそうだなー…。日本円換算だとどれくらいだろうか。一アル=十円くらいかな?
正直僕、金銭感覚よくわかんないんだよね…。ずっと戦場にいたし、そこだと配給だし。慰問の間もお世話されてたわけだから自分でお金払ってないし。この三年の間にお忍びで来て久しぶりに自分でお買い物したよ…。
聞いた話によると、庶民の一回の食事が大体三〇~一〇〇アルくらい。普通の宿に泊まって一泊二食付きで二〇〇~五〇〇アルくらい、らしい。二~三万アルあれば一家四人が一年、結構贅沢して暮らしていけるって話だけど。うーん、よくわかんない。
あ、そうそう。お金の呼び方、って言ったらいいのかな。アル、って普段は使わないんだよ。使うのは商人とか、会計を生業にしてる人たちくらいなんだ。
庶民は銅貨三枚、とか銀貨五〇枚、っていう呼び方をして使ってる。不思議なんだけど、銅貨、銀貨、金貨だけで数えるんだ。昔からそうなんだって。
なのでさっきの話だと、食事は銅貨三~一〇枚、宿は銅貨二~五〇枚、一家一年銀貨二~三〇枚、って事になる。
そんなことをつらつらと思い出しながら食べると、あっという間に食べ終わった。お腹が満たされたのに満足しながら「ごちそうさまでした」と手を合わせる。美味しかったなー。
さて!食べ終わった後までテーブル占領してると迷惑だし、移動しようかな。
目指す北の大門はすぐそこ。朝の二回鐘までまだ時間あるし、馬車も人も往来は多いね。それだけ活気があるって事だから、いいことだよね。
大門は朝の大鐘で開いて夜の大鐘で閉まる。だから大体朝の大鐘から一回鐘までと昼の大鐘前後、昼の三回鐘から夜の大鐘までが往来のピークだったりする。
町から町へは時間もかかるし一定の危険もある。だからできる限り早く出発して早く到着することとある程度固まって行くのがこの世界の普通なんだよね。少ない人数での移動や暗くなるとそれだけ危険が増すから。
まぁ、ヴァリアル周辺は帝都、国一番の都市なだけあって平和なものだから一人で歩いてる人も結構いるけどね。他の所は乗合馬車に乗っていくのが普通かな。僕も次の町からはそうするつもり。乗合馬車は初めてだから結構楽しみにしてるんだ!
じゃなくて。そういうわけで、朝と昼の二回鐘のあたりが一番大門に人が少ない時間なんだ。今は朝の一回鐘が鳴って少したった頃だから、人は多い。
人ごみに紛れながら北の大門をくぐる。入る時には兵士さんたちが身分証を確認するけれど、出る時にはない。だからそのまま進んでいく。
さぁ、これが僕の旅の始まり。
世界中を旅して、たくさんのものを見て、感じよう。創造神様がの言葉を、確かめに行こう。この世界の美しさを、観に行こう。
お金のことは面倒なので適当にさらっと。




