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(元)勇者の異世界旅行記 ~お仕事終わったので旅に出ます!~  作者: 天宮
1章:神聖帝国リリヴァル・ターレ
11/15

9:お見送り。

 部屋を出た僕はてこてこと城内を進んでいく。

 今日が出発の日だとお城の人たちには告げてあり、お別れは昨日のうちに済ませてある。


 一応陛下たちからはせっかくの門出なのだから盛大にパレードとかやろうか?って聞かれたけれど、流石に遠慮した。だって僕、これからもちょくちょくお城に帰ってくるんだよ?パレードなんかしたらもう帰ってこないみたいじゃないか。

 そう言ったら納得してくれたので、パレードはなしになったのでした。


 なので僕は正門から盛大に、ではなく、裏門からひっそりと出発するのである。

 一応変装はしてるけど、顔は変えられないからわかる人にはわかるからね。正門から出るのはやめたんだ。


 ちなみに今の僕の服装は、動きやすい上下の服に軽鎧一式、剣とマントという具合。

 更に変装用の魔道具を使って髪と目の色を変えている。両方とも日本人らしく黒なんだけど、この世界で髪も目も黒いって珍しくって。片方だけなら結構いるんだけどね。

 髪の色は明るめの茶色に、目の色は薄墨色に。髪色は色々試したんだけど、この世界で一般的な金とか赤とか緑とか、そういう色って全然似合わなくって。皆に笑われちゃったからやめたんだー。

 目の色はちょっと日本人らしさを残したくて、薄墨色にした。これくらいの色なら普通にいるからね。

 あ!そうそう。あとねあとね、メガネ、してます!

 実は僕、創造神様の加護の影響で視力がものすごくよくなってね。メガネいらなくなっちゃったんだ。

 ただ、両親が生きてた頃からずっとメガネかけて生活してたせいか、メガネなしだと落ち着かなくって…。だからお休みの日とかは伊達眼鏡して過ごしてたんだよね。

 流石に全力で戦闘するときは邪魔になっちゃうから外してたんだけどね。すぐ壊れちゃうし、血とか砂ぼこりとかで前見えなくなっちゃうし…。

 だから勇者=メガネってイメージはないんだよね!僕がメガネ男子だったことを知っているのは極親しい人たちだけなのである。


 というわけで今の僕は一般人スタイル。冒険者風?

 そんな格好だから、正門から出ると目立つんだよね。それもあるから裏門から出ることにしたんだけど。



 途中すれ違うメイドさんや貴族の人たちとあいさつを交わしながら歩いていく。

 みんな「いってらっしゃいませ」「お気をつけていってらっしゃいませ」「お戻りをお待ちしておりますね」って言ってくれて、笑顔で送り出してくれる。ふふ、嬉しいなぁ。


 そんなこんなで裏門に繋がる扉の前。この扉の向こうにはちょっとした庭園とか、訓練場とか厩舎に繋がる道があって、その先に裏門がある。侵入者対策とかで、正門と違って裏門はまっすぐ道が繋がってないんだよね。

 扉を守ってる警備兵の人に挨拶して、通用扉を開けてもらう。正面扉ほどじゃないけれどこの扉も大きいから、普段は扉にくっ付いてる小さな扉から出入りするんだよね。


 小さな通用扉を通り抜けて、ぽてぽてと道を歩いていく。横手に庭園が見えてきたところで、そこに誰かが立っているのが見えた。

 庭木でも見てるのかな?って思ったけど、どうやら違う見たい。僕の方を見てる。何でだろ?

 不思議に思いながら近づいてみると、すぐにそれが誰かわかった。僕は思わず笑顔になりながら、その人に駆け寄った。


「よぉコーミャ!」

「シャル!」


 そこにいたのは鮮やかな金の髪と湖面のような深い青色の瞳を持った美丈夫。一八〇センチを超える長身と、実戦で鍛え上げられた無駄のない筋肉。そして何よりも、歴戦の強者たるオーラを持ったその人。

 名前はシャルル・ルルド・カリオ・リリヴァル。この国、神聖帝国リリヴァル・ターレの第二皇子であり、ずっと僕と一緒に戦ってくれていた戦友。僕の最初の友達であり、一番の親友であるその人だった。


 リリヴァルの皇族の名前には意味がある。最初が自分の名前、二つ目が皇族の立場、三つ目が母親の実家の名前、そして最後が国名であり皇族の家名となっている。

 二つ目のミドルネームは全部で四つあって、それぞれ「ララド」「ルルド」「レレイ」「ロロイ」。これがそのまま序列を表しているらしい。

「ララド」は皇帝陛下と皇太后陛下、皇太子殿下だけが名乗る事を許されている特別なもの。

「ルルド」は皇子殿下が、「レレイ」は皇女殿下が名乗り、最後の「ロロイ」は現皇帝のご兄弟が名乗るんだって。

 シャルは第二皇子だから、二つ目のミドルは「ルルド」になるというわけ。


 ちなみに皇帝陛下のお名前は「リリアド・ララド・シャルタ・リリヴァル」で、皇太子殿下、つまり第一皇子のお名前は「ララルク・ララド・カリオ・リリヴァル」。だったりする。



「シャル、どうしたの?こんなところで」


 僕はにこにことシャルに話しかける。シャルは忙しいから、ここで会えるとは思わなかったなぁ。


 シャルは僕が召喚された当初からずっと一緒に戦ってくれていた戦友だ。この大陸「アリアル」が誇る英雄でもある。

 魔王討伐の報償授与式で、シャルも「英雄伯」の爵位をもらってるんだよね。爵位的にはいつか継ぐ公爵の方が高いけど、栄誉とか名誉とか、そっちは「英雄伯」の方が断然高いらしい。僕は爵位とかあんまりよくわからないけど。

 でもそのあたりの事でシャルは色々忙しいみたい。なんか面倒な派閥が出来そうとかなんとか?ララルク殿下じゃなくてシャルを皇太子にして皇帝にしようとか。

 でもシャルにその気はないんだよね。自称脳筋だし。「政とかめんどくせー事はラルク兄上に任せるわ。オレは剣振るしか能がねぇからよ!」ガハハハハ、って笑ってたし。


 あ、そうそう、シャルもコーミャも僕らの愛称だよ。

 皇族は同じ音を重ねるのが名付けの慣例みたいで、皆シャルルとかララルクとか、そういう感じらしい。で、呼ぶときは重なってる音を一字取るんだって。

 で、僕のコーミャだけど。香之宮(こうのみや)、ってこの世界の人にはちょっと言いにくかったみたいで。言いやすいように色々言い換えた結果、コーミャに落ち着いたんだ。

 でも僕をコーミャって呼ぶ人ってあんまりいないんだよね。皆勇者とか、カケルとか、そっちで呼ぶし。呼ぶのは戦友である七大陸の七英雄、「英雄伯」をもらった皆くらいじゃないかな?


「なんで、ってそりゃオメー、見送りに決まってんだろうが」

「え、わざわざ来てくれたの?忙しいんじゃないの?」


 何言ってんだコイツ、みたいな呆れた目で見られた!

 いやだって、さっきも言ったけど今のシャルって本当に忙しいんだよ。睡眠と鍛錬以外の時間は全部仕事!みたいな感じで。分刻みのスケジュールだって、メイドさんから聞いてるよ?


「んなもんどうでもなるってーの。そんなもんより、お前の見送る方が万倍大事に決まってんだろうが!」

「シャルぅ…!」


 うぅ、僕の親友かっこいいよぉ…!嬉しすぎて涙出そう。っていうか絶対今目が潤んでるよ!

 それにしてもシャルって皇族どころか貴族っぽくないんだよなぁ。すんごいサバサバしてる。根っからの武人気質だからかな?

 でもお仕事どうでもいいとか言ったらダメだよ…?


「暫くはリリヴァルあっちこっち見て回るんだろ?次の大陸行く前には帰って来いよ」

「もちろんだよ!僕の家はもうここだもん」


 頭をくしゃくしゃと撫でながら言われる。当たり前のように、「帰ってこい」って言ってくれる。これ以上嬉しくて安心することって、そうそうないよ。

 …それにしても、なんか僕弟扱いされてない?僕、シャルより一つお兄さんだよ?もう26歳だよ?いや確かに見た目的にはそうなんだけどね?でもなんか、こう、こう…!


「ま、お前なら何があっても大丈夫だろうけど、気を付けて行けよな?」

「うん!お土産持って帰ってくるね!」


 アイテムボックスのおかげで荷物は全部しまえるからね!いくらでも買ってこれるよ!


「ははっ、楽しみにしてるぜ!」

「うんっ!…シャル、ありがと。行ってきます!」

「おう!行ってこい!」


 そうして僕らは笑顔で別れた。

 僕はシャルの姿が見えなくなるギリギリのところで一度振り返って、大きく手を振った。

 シャルもまた、大きく手を振り返してくれた。


 そして僕は前に向き直って、進んでいく。裏門の前まで来て、門番の兵士さんに通してもらって。いよいよ、お城から出る事になるのであった。



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