8:念願の第一歩。
アリアル歴三二三八年。魔王討伐から三年が経過したある日の朝の事。
僕、「香之宮翔」もとい「カケル・コーノミヤ」は神聖帝国リリヴァル・ターレの帝都、ヴァリアルにあるお城にいた。
三年かけて六大陸すべての慰問が終了し、晴れて自由の身なのである!
…何かこう言うと出所したみたいな感じだね?どっちかっていうと逆だよね?僕、勇者だもんね?
まぁいいや。とにかく、今日は記念すべき日!僕の旅の始まりの日なんだから!
「荷物は全部アイテムボックスの中だしー、変装用の魔道具も持ったしー。忘れ物はないかな?」
ヴァリアル城内にある与えられた私室の中で、僕は旅に出る前の最終確認をしていた。
この世界に来てからずっと、この部屋で暮らしてたんだよなぁ。んー、十年くらい?でも殆ど戦場で過ごしてたから、実際に使ってたのって一年にも満たないんじゃ…?も、もったいない!
だってこの部屋、すごく広いんだよ?前住んでた家がすっぽり入りそうなくらい!
ちなみに前の僕の家は普通の日本家屋。ちょっと古めだけど、敷地的にも建屋的にもザ・一般住宅って感じだった。
そんなわけだから、この部屋は本当に広い。しかも僕しか使ってないし、お掃除以外で僕以外が入る事もない。うーん、やっぱりもったいなかったね。
まぁ過ぎたことを言っても仕方ない。ここはこれからもこういう使われ方をするんだと思っておこう。旅に出たらあんまり帰ってこないだろうけど、でも僕にとって今の帰る家って言ったらこの部屋だし。陛下もこの部屋はずっと僕の部屋にしておいてくれるって言ってくれたし!うん、気にしない事にしよう。
さて、忘れ物も特にないみたいだし。じゃ、行きますか!
「行ってきます」
部屋に向けてそっと呟いて、僕は部屋の扉を閉じた。




