よし、がんばるぞ…!
中央の時計台が18:00を知らせる。平良はその音に顔を上げると、いつもの調子で全員を振り返った。
「おぉ、もうこんな時間か!明日も早いし、今日はこの辺にするか。みんな今日は来てくれてありがとうな!」
「こちらこそありがとうございました!すごく楽しかったです!かわいい服も買えたし…ね、ゆりねさん!」
笑ってゆりねを見る透子に、ゆりねもまた笑顔で返す。
「そうね。私も透子ちゃんと買い物できて楽しかったわ」
「うむ、俺たちの絆もまた一段と深まったと思う!いや、確実に深まった!なぁ八神!」
「はぁ、そりゃよかったな」
皮肉を言う元気も残ってないのか、八神が力無く返す。
「じゃあ私と平良は香辛料を買ってから帰るわ。また連絡するわね」
「は、はい!」
「またなー!」
食品売り場へと向かう2人を見送りながら、透子と八神もまた、改札の方へと向かった。
◇
「いやー楽しかったねぇ。色々あったけど、可愛い服も買えたし…!着るの楽しみだなぁ」
「俺は疲れた」
「あはは、でも最後まで付き合ってくれたじゃん!今日だってわたし、八神さん来ないかと思ってたのに…」
疲労を微塵も隠さない八神に透子が詰め寄る。八神はいつも以上に背中を丸めながら、あくび交じりに答えた。
「まぁちょっとな。見たいもんもあったし」
「見たいもん?」
「や、なんでもない。つーかお前はもっと同年代と絡んだほうがいいんじゃねーのか?俺は言うまでもないが、あいつらだって歳上だろ」
「や、八神さんにまともなこと言われた……」
「あ?俺はずっとまともだ」
八神の珍しく真っ当な指摘に透子は肩を落とす。
「そ、そうなんだよね…で、でも今週は語学の初授業あるし…!語学のクラスは人数少ないし、新入生だけだから…うん、いけると思う!」
「まぁなんとかなるだろ。最悪友達なんざいなくても卒業はできるしな」
「最悪のシナリオにならないようにがんばるの!」
透子は眠そうに目を擦る八神を見上げる。
(八神さんって悪い人ではなさそうだけど、変だしなぁ…大学生って感じじゃないし…平良部長もゆりねさんも優しいけど、先輩だし…)
八神の言葉を反芻しながら、透子は視線を落とす。
(同年代の友達かぁ…)
高校時代。引っ込み思案な自分を変えたくて自分なりに色々試してみた。
(初手で失敗して、そこからなかなか馴染めなかったなぁ…最初が肝心なんだよね…)
慣れないギャルを演じたり、無理に明るく振る舞ってみたり。それでも、いやそのせいか、全然うまくいかなかった。
(でも、もうあんな失敗しない…!普通に…普通にすればきっと大丈夫…!)
「よし、がんばるぞ…!」
「なーんか空回りしそうだな、こいつ…まぁいいか」
八神は小さくガッツポーズをする透子を横目に、再びあくびをした。




