太樹寺の変 兵たちが夢の跡!!
次回で最終回となります。
最初から付き合ってくださった方、本当にありがとうございました。
また戦国系統の新作を考えておりますので、感想などいただけたら嬉しいです。
結城謙三
動かなくなった妖狐とお雪を見上げ、静まりかえる大本堂内にイノリの口を借りた“占い師”が
「ーー十」…… 「ーー九」……と秒読みを始め、その声が大本堂内に響き渡る。
「ーー五」
突然、妖狐から金色の光りが迸り、瘴気の満ちていた大本堂内が浄化される。
これからなにが起こるのかと固唾を飲んで見守る 数千の目
「ーー三」
龍眼の精度を極限まで上げお雪の身体を見る。
お雪の赤い気脈に、小太郎の時よりもさらに細かく絡み合う黒い崇徳院の気脈
「ーー二」
“占い師”の指示に従い、天女の羽衣に風魔法を纏わせトンッと床板を蹴る
風を孕んだ羽衣が、穏やかな川の流れの中を滑るように上昇し銀色の古龍の覇気が薄紫色の
結界に触れると、まるでシャボン玉のようにゆっくりと弾け消滅していく。
「ーー壱」
イノリの身体を流れる八岐大蛇の加護を極限にまで引き上げ、酒呑童子が宿る童子切安綱に注いでいく。 鞘に収まっている童子切安綱……玄墨よりもまだ黒い深淵の闇が刀身を染め上げていく
鞘から“ドロドロッ”と溢れ出し周辺の空気までもを夜の淵が広がるように染み出していく。
「ーー零!今っ!!」
お雪の頭頂部から真っ直ぐに延びる黒い気脈を龍眼が捉える
音の速度を越え、黒い気脈を目指し降りてくる崇徳院の季ーーー
黒い気脈と崇徳院の季が繋がる刹那! 童子切安綱の刀身が滑り込み深淵の闇が導火線に着火した火種のように黒い気脈が枯れ果てぼろぼろと崩れ始める。
それに遅れて“チンッ!”という鯉口を切る音が大本堂内の人々の耳に届くのだった。
お雪の四肢がだらりと垂れ下がり、黒い気脈を追い出すかのような大きな鼓動を一つ……
そして重力の存在を思い出しかのように落下し始める
いつの間にか落下点で腕を広げていた織田信忠がしっかりと抱きとめ、お雪の顔を覗き込む。
「大丈夫です!ちゃんと息をしています!!」
あれほど険しかったお雪の表情が解れ、目尻に一筋の涙が光る……
そして行き場を失った崇徳院の怨霊は、この場での最大戦力である個体に最後の牙を剥きながら憑依すべく飛ぶ……すぐ目の前にいるイノリへと
居合を振り抜いた姿勢の残心から、崇徳院の行動を予期していたかのように正面の空間を袈裟に斬る、深淵の闇が切っ先に沿って糸を引くように流れ 刀身にわずかな抵抗のあと堰が決壊するかのように瘴気が爆散する!
イノリが童子切安綱を抜いてからわずか数秒の出来事……
数千の目にはなにが起こったのかも理解できず、目にも止まらぬイノリの居合と返す一太刀で爆散した瘴気が柳の枝が垂れるように、細く長い糸を引きながら床へと降り積もっていくさまを唖然としながら見つめるだけだった。
「終わったの?」
光ある者の一人である茶々の目には崇徳院の怨霊が消滅する瞬間が見えていた。
「ああ……本当に天女様の娘なんだな〜」
伊達政宗がつぶやき茶々の肩を抱く。
「お前ら!終わったぞ!!崇徳院の怨霊は完全に消滅した……いつかまた蘇るがな がっはっはっはっ!!」
数千の目が大嶽丸に集まり、豪快な笑い声に釣られて力のない笑みがこぼれる。
ほとんどの者たちは、何が起こったのかを理解できなかった。
しかし終わったことはようやく理解し、黒い甲虫の粘液でベトベトの床に構わずに座り込み、それぞれの思いを口にするのだった。
風魔小太郎の遺体に寄り添う北条氏直の背に手を伸ばし、声を掛けようとした
イノリの手が止まり、わずかな迷いののちその手を引き戻す。
イノリの肩に玉藻前の姿の妖狐が手を置く
「そっとしておいてやりな……」
玉藻前に手を置かれた瞬間、大袈裟に“ビクッ”と反応する イノリ
玉藻前がすぐ後ろにいたことは知っていたはずなのに……
「お玉様……イノリの占い師が、この国の未来にお玉様はいないと言っているのですが!?」
不安に満ちた目で玉藻前の目をまっすぐに見上げる イノリ
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