12 飽きた
いつものように村に来て、出迎えた少年と共に納屋に隠れる。
今日は少し気温が高くて、走ったら汗をかいた。納屋の中は涼しく、汗をかいた後では寒く感じるかもしれない。
「ねぇ、今日は外にいよう?日が暖かいし、風もそこまで強くないから過ごしやすいと思うよ。」
「いつも中に隠れているんだから、ここでいいと思うよ?」
「・・・たまには、いつもと違うことをしてもいいんじゃない?」
「・・・」
少年は、私の言葉を聞いて何かを探るような顔をして私を見た。私はそれを、ただ見つめ返す。
「君は・・・もう、飽きたの?」
「そうかもね。」
「そう。」
「あなたと話をするのは、楽しいよ。でも、みんなで遊ぶことは、少しだけつまらないって思う。だって、何もかも決まっていて、わくわくすることがないんだもの。」
「それでいいと思うけど?」
「それで楽しいの?」
「・・・」
楽しいわけがない。だって、少年は私よりもずっと前から同じことを繰り返している。私よりも飽きていることは想像できるし、実際この納屋にいるとき以外はつまらなそうにしていることが多い。
少年が楽しそうなのは、私と話している時だけだった。
「あなたも、本当はもう飽きているんでしょ?」
「・・・楽しい必要ってある?」
「え・・・それは、遊びだもん。楽しいから遊びはするものでしょ?」
「外ではそうだね。でも、ここは・・・この村では、いつも遊んでいるから遊んでいるだけだよ。」
いつもやっていることだから・・・例えば、私が毎日スマホを見るのも、いつも見ているからだ。メッセージなんて、本当にまれにしか来ないのに、私は毎日スマホを見ている。
それと同じようなものなんだろう。
「・・・私、出るね。」
「待って!」
私が外に出れば追いかけてきてくれるかもしれないと思ったのだが、出る前に腕を捕まえられて止められてしまった。
「一緒に来る?」
「行かない。」
「・・・」
「ねぇ、わかっているよね。なんで君がこの村に来ることができるのか?僕たちと同じで、変わりたくないって願っていたから。ずっとこのままでいたいって、思っているから。その思いが無くなれば・・・もう、君はこの村に来れないんだよ?」
「そうだね。たぶんあと少しで、もうここには来れなくなると思う。あなたの言う通り、ずっとこのままがいいって思っていた。でも、変わるしかない・・・変わっても、いいかもしれないって、最近思っているの。」
変わりたくないと願って過ごして、極力変わらないようにしていた。その時は、変わることが恐ろしくて、未来が怖くて仕方がなかった。
でも、橋本さんとの関係ができて変わった時、毎日学校に行くのが楽しくなって、変わることの恐ろしさが減った。
「変わることで、失うものってあると思うよ。でも、失うだけじゃない、得るものだってちゃんとあるの。失うだけじゃないってわかれば、変わることの恐怖は薄まるよ。」
「それで、大切な物を失ってしまったら、どうするの?そんなことになるくらいなら、僕は退屈な日常を繰り返すことを選ぶよ。」
「本当にそれでいいの?」
「いいよ。ずっとそうやって生きてきたんだ。僕は、これからもずっと、この村で過ごす。」
「・・・」
かたくなになっているが、退屈で仕方がないことはわかっている。もしかしたら、あともう一押しで・・・
私の腕をつかんで離さない少年の手を見て、私は勇気を振り絞ることにした。
ただの言葉で説得しても、きっと少年を外に連れ出すことはできない。私の心を伝えるんだ。




