11 変わった
教師がざっと英語を翻訳し、説明をしている。私はそれを聞き流して、真っ白のノートに目を落としながら最近のことを振り返った。
もう、一週間か。
橋本さんたちとご飯を共にするようになってから、1週間が経った。昼御飯だけでなく、体育の授業でペアを作る時なども橋本さんと一緒に作るようになった。
前よりもクラスが、居心地がいいものだと感じる。
気づかないうちに感じていた居心地の悪さが消えたおかげで、学校に行くのが前よりは楽しくなった。
変わりたくないと思っていたし、今も変わりたくないと思っている私が、変わったおかげで毎日が楽しくなるようになるなんて・・・おかしな話だ。
変わって傷つけられることもあれば、楽しくなることもあるんだな。
このままここにいれば・・・私がどう願おうが周囲は変わっていく。高校生活が終わって別々の道を歩むことになって、一緒の道に進む者もいればもう交わることのない道に進む者もいるだろう。
変わっていくんだ。
自分だけ変わらないなんてことも、限界がある。私は確実に変わっていった。それを苦に感じることが、最近はなくなった。
分数が苦手な私は、変わった。
最近は、分数の問題が得意になったと言えるほどに。
教室に一人でいた私は、橋本さんたちと談笑するようになった。
村に毎日通っていた私は、今でも村に通って少年と遊んでいる。
変わっていく私と周囲。しかし、村と少年はいつまでも変わらない。同じように少年は笑顔で出迎えて、かくれんぼを一緒にする。いつもと同じ場所で、いつもと同じ時間、いつもと同じ鬼の子が来るまで、私は少年と話している。
話している内容は、少年は村のことだけ。私は、橋本さんたちの話をするようになったけど、少年は村の話ばかりだ。
仕方がない、少年は村から出ていないのだから。
最近は、少年と一緒に村を出たいと思い始めた。
いつも同じ遊びを同じように遊ぶだけでなく。別の場所で遊んでみたり、違う結果が欲しくなったり・・・全く別の、たとえば遊園地、水族館、動物園に行くことなどをしたいと思った。
何度か村の外で遊ぼうと誘ったけど、村を出たくないと言って全く取り合ってくれない。なら、たまには別の場所に隠れてみたいと言ったけど、いつもここに隠れているんだから、ここでいいじゃないかと言われる。
変わりたくない。変えたくない。変わって欲しくない。
変化に対する忌避感が私以上に少年はあるのだろう。
私は、少年のことが嫌いなわけではない。むしろ好きだから、今の遊びだけでは満足できなくなってしまった・・・好きだから、まだ私は村に行っているのかもしれない。
変わりたくない、変わって欲しくないと言いながら、村での遊びが変化のないことに私は飽きていた。
もっと少年のことを知りたいと思うのに、このままだとこれ以上少年について知ることはできない。
聞けば答えてくれるが、そういうのではなく、一緒に生活をしてこういう人なんだという気付きが欲しい。でも、それはこのままでは叶えられないことが明らかだ。
村を出たくないという少年・・・環境は変えられない。
遊びは変えないという少年・・・行動は変えられない。
なら、何なら変えられるだろう?何を変えれば、少年のことをもっと知れるだろうか?
視界の端に、牧口が映った。
前の席に座っている彼女から小さな手紙を回されて、嬉しそうに微笑んでいる。
牧口とは、クラスメイトだった。それから友達になって・・・今はただのクラスメイト。
そうだ、変えられるものはまだある。
関係。




