#2
「(も、もうちょ……もう、ちょい……)」
あれから、どのくらいの時間が経過しただろうか。
俺は時間を忘れてしまうほどに、校長の幼い胸を夢中で探索し続けた。
しかし、いまだに秘境へは辿りつけていない!
そんな俺を嘲笑うかのように、小鳥のさえずりが聞こえる。
「……ん? 小鳥……」
ここでようやく、俺は校長の胸から視線を外し、部屋の窓を見た。
カーテンの隙間からは、日の光がこぼれている。
「朝じゃあ、ないか!」
なんだ?
俺はかれこれ五時間も、発育途上の幼い胸を凝視し続けたのか!?
……一体なにをしているんだよ、俺って奴は!!
自分のしていた行為に、今更ながら罪悪感が芽生えた。
それによって、俺の興奮度は、一気にトップからローへとギアチェンジされた。
その反動なのか、自己嫌悪が嵐の如く襲いかかる。
俺は頭を抱えながら校長を見た。
こんな幼い子に……こんな……ん?
――校長と目が合った。
心なしか、睨まれているような気がする。
「お、おはよう」
「……慎也。目が充血を通り越して、軽く流血しているぞ」
校長は呆れたように言って、頭上に手を伸ばしながら欠伸をした。
「そんな日もある!」
「はぁ。貴様は行動力があるのだか、ないのだか、我にはよく解らん」
「そ、それってどういう意味?」
「……はぁ。貴様がずっと我を凝視していたものだから、気になって寝むれなかった。そのせいで我まで寝不足だ」
校長は二度目の溜息を吐いて、更にとんでもないことを言う。
「…………しかも、胸を」
ば、ばれていたのか!
おかしいとは思っていたんだ。
俺が校長を見続けてから、校長は一度も姿勢を変えることはなかった。
つまり、校長も起きていたということ!
だが解らない。
校長は俺の視線に気付きながらも、どうして狸寝入りをしていたんだ?
校長の性格を考えれば、すぐに拳が飛んできてもおかしくなかったはず。
「我の胸なんか、その、見ても面白くはないだろ? ……小さいし」
校長は、ワンピースの裾を小さい手でギュッと抑えながら、上目使いで俺を見た。
俺の目の前にいるのは、本当に校長なのか!?
ヤバイ! ローにチェンジされたはずのギアが、またもやハイになっちまう!
今の校長はなんというか……かわいすぎる!
その一言に限る。
「胸を凝視していたというのは断固肯定しかねる! それと、胸の大きさに関しては申したいことがある!」
「……む」
「おっぱいの大きさには、それぞれに違った良さがあるんだ!」
「…………そうなのか?」
校長は俺の言葉に圧されたのか、俺から少し距離をとった。
「大きな胸には包容力! どんなに辛いことがあったとしても、大きな胸に顔を埋めれば、脳に幸せエキスが分泌され、辛いことなんて吹き飛んでしまうことだろう! 平均サイズの胸には安心感! 大きくもなく、小さくもない。しかし、もし嫁が平均サイズの胸の持ち主ならば、俺は鳥が巣に帰るのと同じように、安堵を求めて真っ先に胸に帰ることだろう。そして、小さい胸には……夢や希望がある! もしかしたら、これから成長をするかもしれない。
『お前の胸は、必ず俺が成長させてやる!』がキャッチコピーの、おっぱい育成型ADVを楽しめることだろう! それになによりも、小さい胸には犯罪的な香りが…………どうして、俺からそんなに距離をとる!?」
俺が夢中で胸の良さを語っていたところ、校長はベッドの隅ギリギリまで移動をして、汚物を見るような目つきで俺を見ていた。
「……このようなことを息継ぎなしで生き生きと語るとは、やはり貴様はゴミクズゲロ野郎だっ」
なっ!
今、俺は、――素で気持ち悪がられているッ!?
「まっ、今のは冗談なんですけどね! 俺が言いたかったことは、胸の大きさで女性の価値は決まらないってことさ!」
俺は、すぐさま可能な限りに爽やかな表情を浮かべ、前言撤回を図った。
「……まぁ、良い。とりあえず、……慎也は小さい胸も好きなんだな?」
ごにょごにょとハッキリしない言い方。
もしかしたら、校長は俺の返答次第で更なる罵倒を浴びせてくるかもしれない。
俺は校長の問いに対し、正直に答えるべきかを考えた。
そして、俺が導き出した答え。
「大好きです」
好きなものは好き。
罵倒なんて、知ったこっちゃねぇ!
さぁ、くるならこいッ!
「……ならよい」
しかし、校長が俺に見せた反応というのは、俺が考えていたものとは百八十度違うものだった。
「朝食の支度をするから、その腑抜けた顔を洗ってこい!」
校長の口調には、確かに辛さがあったのだが、顔は女の子がケーキを食べているときのように、甘い笑顔だった。




