表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神のから騒ぎ  作者: あすかはなび
第二神話 新天地
21/29

#10

 三十分ほどの長いシャワーを終えて校長室に戻ると、食欲をそそる良い香りが俺の鼻腔をくすぐった。

 気になって匂いを辿ると、テーブルの上には様々な和食料理が綺麗に並べられていた。


「うわぁ。これは凄いな」


 良く見てみると、ご飯が盛られた茶碗が二つある。箸も二膳。

 片方の茶碗は控えめにご飯が盛られているが、もう片方の茶碗にはエッフェル塔の如くご飯が盛られていた。


「俺も食べて良いんですか?」


 御馳走が目の前にあるというのに、校長はソファーの上にちょこんと座ったままで、箸を持たずに腕を組んでいるだけだった。


「ふん。昨日の晩御飯の残りで良いなら食べろ。我が一人で食べるには多すぎる。捨てるくらいなら、まだ貴様に食べてもらった方がマシだからな」


「それじゃあ、遠慮なく!」


 腹が減りすぎて死にそうだったんだ。これほど嬉しいことはない!

 それに、校長(ロリ美少女)が作った料理だ。食べないわけがないだろ!


「いただきます!」


 俺は手を合掌して、元気に挨拶をする。

 校長も俺に合わせて挨拶をした後、箸置きに置かれた箸を手に取った。


「昨日の残りとか言ってましたけど、普段からこんな御馳走を食べているんですか?」


 なんとなく気になったので、俺は校長に尋ねた。


「き、昨日はたまたま作りすぎただけだ! そのお陰で、貴様は食事にありつけているということを忘れるな!」


 校長は俺に釘を刺すように言いながら、キュウリのヌカ漬けを箸で取った。

 俺は鯖の味噌煮を箸でほぐして口に運ぶ。

 俺は味にうるさい方なのだが、この鯖の味噌煮は非の打ち所がなかった。

 口に入れた瞬間、口全体に広がるコクのある味噌の旨み。そして、噛まずにしてとろけてしまう鯖の柔らかさは、正に芸術と呼ぶに相応しい逸品だった。

 俺は夢中になって、無言で他の料理も口に運ぶ。

 校長はなにも喋らずにもくもくと食べる俺を見て、なにか思うことがあったのか、


「……もしかして、美味しくないか?」


 不安そうに尋ねてきた。

 俺はここで失礼なことをしてしまったことに気がつく。

 あまりに美味しいものだから、俺は無我夢中になってしまい、感想を言ってなかった。

 作り手からしてみて無言で食べられたら、美味しくないのだろうか? 

 と不安に思って当たり前だ。


「とんでもないです! 言葉にならないほどに美味しすぎて……」


 偽りのない正直な気持ちを、そのまま校長に告げる。


「そうか! 貴様の好みの味が解らなかったから、我の好みで作ってしまってな。もしかしたら口に合わないかもと心配だったのだ」


「え? これって昨日の残り物じゃなかったんですか?」


 まるで、俺が風呂に入っている間に作ったような言い方だったので、俺は思わず校長に聞いてしまった。

 俺の問い掛けに対し、校長の顔が一瞬、動揺の色に染まるが、すぐに表情を引き締め、


「無論、残り物だ!!」


 俺に有無を言わせない、強い口調で言った。

 これは下手にツッコまない方が良さげだ。


「そうですよね! 鯖の味噌煮をすぐに作れるわけがないですもんね」


「(……それだけは本当に残り物だからな)」


 校長が小さく呟いた気がしたが、気のせいだろう。

 

 その後、俺と校長は無言で食事を続け、食べきれるか心配だったエッフェル塔盛りごはんも、いつのまにか平らげていた。


「ぷはぁ。ごちそうさまでした! とっても、美味しかったです!」


 校長が注いでくれた麦茶を喉に通し、俺は合掌して挨拶をする。


「まさか、全て食べるとは思わなかったぞ。噛まないで飲むからいけないんだ」


 校長は口では呆れたようにいっているが、表情はどこか嬉しそうだ。


「それほど美味しかったんですよ。和食をここまで美味しく作れるなんて、よほど練習したんですね」


 校長が料理を作れるということだけでも驚きだったのに、まさか、ここまで美味しく作れるなんて予想だにしていなかった。

 それと、俺は校長に対して洋食を食べるイメージを持っていたので、和食が好きというのにも驚いた。


「そ、そうか。まぁ、なんだ。食べたくなったら、その、いつでも来い」


 そっぽを向きながら、遠まわしに『また来てくれ』という校長を見て、俺は自分を情けなく思った。

 校長は、強い心の持ち主だなんて勝手に思い込んでいたが、そんなことはなかったからだ。

 もっと早く気付いてあげるべきだった。

 校長は、学校に一人で寝泊まりしているというのに、皿の枚数も、箸の数だって、複数人を想定しているじゃないか。

 きっと、校長は寂しかったんだ。


「お言葉に甘えてまた来ます! そうだ、今度はアテナ理事長も呼びましょう!」


 アテナ理事長と校長は双子の兄弟だと聞いた。

 だから、この提案に対して校長は喜ぶと思った。


「……いや、アテナを呼ぶのは駄目だ」


 しかし、校長の返事というのは、俺の想像とは正反対に冷たいものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ