#7
俺は図書室を探して校舎を徘徊していた。
神の学校だから、神について詳しく書かれた書物が図書室に置いてあると考えたからだ。
しかし、
「やばい。ここはどこだ」
完全に道に迷っていた。
「おかしい。さっきから同じ場所を何度も通っている!」
俺の目の前には、『拷問室』と書かれたプレート。
拷問室を目にするのは、これで六度目だ。いや、七度目だったかも。
階段を下りても同じ階のままだったし、上がっても同じ階だった。
正しい道を通らなければ、永遠と無限ループをするということなのか?
「まるで、ロンダル○アの洞窟じゃねぇか」
唯一の救いは、ロンダル○アの洞くつのように落とし穴がないことだな。
流石は神の学校だぜ。
まぁ、神の学校というより、魔王城って方がしっくりくるけど!
俺は拷問室の扉を睨みつける。
「勇者の感が告げている。正解はここにあると!」
俺はおもむろに拷問室の扉に手を掛けると、勢い良く扉を空けた。
ガラララララッ!
「失礼しま…………した」
開けた扉をゆっくりと閉める。
「いや~。答えはここじゃなかったか。他を探そう!」
俺は何も見ていない! ……うん。見てない。
ガラララララララッ!
「うおぉぉ! 転校生よぉぉ! まぁさぁかぁぁ! 入部ぅぅ希望ぉかぁぁ!!」
ブリーフ一枚で、体の至る所に赤いロウソクのロウを浴びたモヒカンの姿。
「うげっ。出たな、アークデーモン!」
「ガァーーーハッハァ! まぁさかぁ転校ぅ生ィィがぁぁ……うぇっ! ごほ!」
「咽るなら普通の喋り方しろよ!」
「ぬ、ぬぅ。仕方あるまい」
「お前、拷問室でナニしてたんだよ?」
俺はできる限りの冷たい視線をモヒカンへと注ぐ。
「ぬ。それはだな、部活動を――」
「なにをしている! 豚がご主人様の許可なしに勝手に出歩くんじゃないよ!」
モヒカンの声を遮る、攻撃的な女性の声。
視線を向けてみれば、そこには赤いボンテージに身を包んだ女性がいた。
「あふんっ。すいません! ご主人さまぁ!」
モヒカンは大きな体を精いっぱい小さくして、女性に土下座をしている。
モヒカンはてっきり、ゲイなんだとばかり思っていたが、そうでもないらしい。
まぁ、そんなことはどうでもいいんだが。
つーか、なんとも汚ねぇ絵図だ。
「豚の分際で言葉を喋るなんて生意気ね。身の程を知りなさいっ!」
女性は太もも部分に収納していた鞭を取りだすと、モヒカンに向かって鞭を打ちつけた。
「あひんっ! あふっ、ブヒ、ブヒィィ!」
なんだこの光景!
ご主人様っていうよりも、女王様じゃないのか?
とにかく! 俺にここまで悪寒を感じさせるなんて!
「あの~、お楽しみ中、大変恐縮なのですが、図書室ってどうやったら行けますか?」
豚となったモヒカンにではなく、鞭を笑顔で振るう女性へと尋ねた。
なんとなくだが、タメ口ではいけない気がしたので敬語を使う。
本当はこの人を無視したい!
だけど、やっと見つけた図書室への手掛かりだ。
「ん? アナタ、……緒方慎也君ね」
怪しい笑みを俺に向ける女性。
「俺の名前を知っているってことは、同じクラスの人ですか?」
「いいえ。アナタの学年より一つ上の三年生よ。まぁ、この学校に学年なんてあまり関係ないけどね」
先輩は言いながら、俺の顎を指でなぞる。
その際、背筋がゾクりとする。
「ひゃぅ」
思わず声が出てしまった! 恥しい! 死にたい!
「あらあら、可愛い声で鳴くのね」
クスクスと笑い声を漏らす先輩。
良く見れば、かなりの美人さんじゃないか!
モヒカンの野郎。こんな美人に罵って貰えて幸せ――
「んはっ! 俺はなにを考えているんだ!」
「(……やっぱりこの子、才能があるわ!)」
俺には聞こえない声で、先輩はなにか呟いている。
「あ、あの! 図書室に辿り着くにはどうしたら?」
「ふふ。図書室より、もっと良い所にイカない?」
先輩は猫の顎を撫でるかのように俺の顎を撫でる。
き、気持ちイイ!
「と、としょっ、しつよりぃ、イィっ! ところれすかぁ?」
先輩が与えてくる快感のせいで上手く舌が回らない。
「そうそう、図書室よりも良い所よ」
先輩は淫靡な笑みを浮かべながら俺の耳元で囁いた。
だ、駄目だ! 脳がとろけてしまう!
エロゲだったら、ここらで選択肢が出るんだろうな。
『俺は――』
1.快楽に身を任せる。
2.強く意思を保つ。
みたいに!
「はぁ、はぁ」
「あらあらぁ! こんなに息を荒めて! 初対面である私に興奮しちゃうなんてイケナイ子ね!」
先輩はモヒカンを椅子の代わりにして、悩ましい足を組みながら、上から目線で俺を見る。
上から目線?
ここでようやく、俺が取っている姿勢に気付いた。
四つん這いッ!?
俺は知らぬ間に、二足歩行を捨てていたというのか!
あぶねぇ!
モヒカンの二の舞になるところだったぜ。
「先輩は一つ、勘違いをしているッ……!」
「言ってごらんなさい」
俺は立ち上がると同時に気を引き締めて、先輩と対峙する。
「俺はぁッ! ロリにしか興奮をしないッ!」
「……じゃあ、どうして息を荒げていたのかしら?」
「それはっ! 先輩の姿を俺の脳内でロリ変換して妄想していたからです!」
一瞬、先輩の頬がピクっとした。
「……でも、結局それって、私に興奮してたってことじゃない?」
「甘いですよ、先輩。幼い子が将来的にどう育つかを妄想する分には、希望があるかもしれません。が、成長を終えてしまった体に対して、幼い体に育ってくれと願っても無駄。希望もクソもないでしょ? 成長を終えてしまえば、後は朽ちていくのみ。つまり、俺が先輩の幼い姿を妄想するという行為は、架空のロリに対して興奮していたも同然だ!」
俺の力説が廊下に響き渡る。
息継ぎをしていなかったことから、達成感と疲れがドンときた。
「ふふ。アナタ、実に面白いわ」
鞭でしばかれるかも、と内心ドキドキだったんだが、どうやら大丈夫みたいだ。
「(……難易度が高ければ高いほど、堕とし甲斐があるわ!)」
またもや、先輩は俺に聞こえない声でなにやら呟いている。
「そうそう。図書室への行き方だけど――」




