#5
長かった、転校初日が終わろうとしている。
黄昏時。夕焼けの茜色に染まった教室からは哀愁が漂っている。
そんな、憂鬱な気分にさせてくれる教室の自席に座っていた。
周りのクラスメイトは教室に残っていない。
改めて周りを確認した後、俺は机の上へと上半身を預けた。
「はぁ、疲れた」
そして呟く。言葉に出すことによって、より疲れを実感してしまう。
それでも口に出したのは、今日初めて知った世界のことを思い返す合図だからだ。
神が通う学校、森羅万象学園。
ここに通う神達は、……落ちこぼれ。
人間から存在を忘れられただけではなく、同じ神からも見放されているらしい。
『学校』とこそ呼ばれているが、俺にはここが劣等者の収容所に思えてしまう。
それに、アレス先生は言っていた。
『翼は神の実力を表している』
つまり、翼は神である証なわけだ。
ここに通う生徒には翼がない。いや、あったのか。そもそも、失った翼というのはまた元に戻るものなのだろうか?
「――お兄ちゃん」
そんなことを考えていたら、誰かに呼ばれた。
俺には兄弟なんていない。
だから『お兄ちゃん』で反応するのはどうかと思うが、この声には聞き覚えがあった。
……なんせ、死にかけたときに聞いた声だ。忘れるわけがない。
俺は驚きを隠しながら声の方へと視線を向けると、声の主の名前を呼んだ。
「セネメラ」
「ん」
セネメラは、嘆息を漏らし、長くて綺麗な金髪を片手で払う。
その際、体に似合わずに発達した胸が揺れた。
思わずガン見しそうになったが、セネメラが俺に視線を向けているので、セネメラの視線に合わせる。
それにしても、どうしてセネメラが声をかけてきたのかが解らない。
だけど、夕焼けに染まる教室の雰囲気と、セネメラが帯びているものは、とても良く似ているということは解る。
「本当に入学してくれんだ」
そう言うと、セネメラは可愛く微笑む。
こんな表情を見せられたら、
「毒で脅したくせに!」
なんて、ケツが裂けても言えない。
「まぁ、美少女との約束を破ったら、紳士失格だからな」
「……美少女限定っていうのは、紳士じゃなくて変態に近いと思う」
「ぐっ。小さい子限定と言っておくべきだったか……」
「……それは、完全な変態」
「いやいや、なんかヒーローっぽいでしょ!?」
「ただの変態」
流石は『ポイズン』を司る神。かなりの毒舌だぜ。
俺の紳士像がここまで無残に破壊されるなんて、おそらく初めてだ!
しかし、なんだろう。
小さい子に厳しい事を言われると、……脳が痺れる!
更なる痺れを欲して、毒舌で罵られたい!
俺は紳士であることを一時封印し、快楽のためだけに動くことを決意した。
「俺は本当に紳士なんだよ~。ホラ、パンツだって紳士用を穿いているでしょ? ホラ! ホラホラぁ!!」
言いながら、セネメラに俺のパンツを晒す。
今日は転校初日ということもあり、お気に入りのパンツを穿いてきたんだ! いわば勝負パンツ!
そんな、俺のデッドボール気味な送球に対して、セネメラは見事なライナーを打ち返してくる。
「……キモい」
びくん。
「……どうして生まれてきたの?」
びくん、びくん。
「……半径十mに入らないで」
びゅくん、びゅくんっ!
「……生まれてきてすいません。ボクにお似合いなのは肥溜の中です。排出物が神の通う聖域なんかにいてすいません!」
思わず俺の口から、そんな言葉が出てしまうほどに、セネメラの言葉は快感……厳しかった。
俺は更なる蔑ましがくると思っていたが、セネメラは、
「……大丈夫。ここは、必要ない存在が入ったゴミ箱だから。聖域からは程遠いよ」
そんなことをサラっと言った。
読んでいただき、ありがとうございます!
次回はシリアスになりそうです。
『なりそう』なので、まだ未定ですが(笑




