#4
休み時間。
俺の座席周りにクラスメイトが輪のように集まって、転校生の醍醐味ともいえる、質問攻めに遭っていた。
しかし、その内容というのは、
「彼女いるの?」
「クラスで誰が一番可愛い?」
といった、妄想全開な甘ったるい内容ではない。
「なにを司ってるの?」
「どうして信仰されなくなったの?」
といった、俺が神という前提での質問ばかりだった。
……どうすれば良い。俺は神なんて大層な存在じゃない!
それも、人間という人種の中でも限りなく底辺で、ドブ川を彷徨う空き缶みたいな存在なんだぞ?
今の段階で、人間だとバラすことはアレス先生に禁じられているし、なんて答えようか。
返答に困って、作り笑いをしながらクラスメイトを見る。
みんな期待に満ちた顔をしてやがる。
……これは、返答をミスれないな。
「はは。みんなは、俺がなにを司っているように見える?」
こう言っておけば、周りが考えている間に自分のプロフィールを設計できる!
「ん~。君ってなんか、見た目がのべ~としてるから、忘却の神とか?」
クラスに一人はいるであろう、メガネに三つ編みのちょっと地味ながらも巨乳な女の子が、俺に考える暇を与えずにそう言った。
「は、はは。俺って、間抜けに見えるのかな?」
笑顔でそう返すものの内心は、
『このアマしばくぞ! 十年前に出直してこい!』
だった。
「あ! 塩分の取り過ぎかどうかは解らないけど、顔がなんかしょっぱいから、アジ○オの神とか?」
今度は、黒髪の短髪に身長が高めで貧乳な、典型的なバレー部員っぽい女の子が、やはり俺に考える暇を与えずに言ってきた。
「あ。それってアジ○オみたく、身近に置いておきたくなるような存在ってこと?」
気になる言い方だったが、遠まわしに考えたらそう思えないわけでもない。
「いや、単純にしょっぱそうだから」
が、どうやらそのまんまの意味だったようだ。
……怒って良いよね! コレ、絶対に怒っていいところだよねッ!
怒りで金髪のツンツンヘアーの人になりかけたとき、俺の横で気絶していたおとさんが復活を遂げて輪に混ざってきた。
「……なんの話だ?」
俺の周りに、クラスメイトが集まっていたので気になったのだろう。
目覚めたばかりだからか、いささか意識朦朧としている気がする。
「俺がなにを司っているかって話」
俺が今の状況をぶっきらぼうに教える。
「ん? 慎也はなにか司って……いや、そうだな。……紳士を司るとか」
うぉぉぉぉぉぉ! そうだよ! そんなのを待っていたんだよ!
「ふぅ。当てられてしまったか」
俺はわざとらしく額に手を当て、あちゃ~のポーズを取る。
できることなら、おとさんにではなく女子に言われたかったんだが、悲しきかな。
――女子は俺の紳士力に気付いていない!
「え? 紳士を司る神なんて存在するの?」
そんな声が聞こえる。
え? アジ○オはつっこまなかったのに!
だが、ここで食い下がったら俺の威厳はなくなる。
「……ここにいるッ!!」
俺は強く言い放ちながら、己の心臓位置に親指を指した。
「「おお~」」
俺を取り囲むクラスメイトが感嘆の声を上げる。
俺の表情は自信に満ちていたに違いない。
しかし、そんな表情とは裏腹。
(や、やってもうた~!!)
心の中ではさっそく過ちを嘆いていたのだった。




