#3
「……そうだ、おとさん。聞きたいことがある」
「なんだ? 言ってみろ」
俺に微笑みかけるおとさん。
「セネメラって子を知っているか?」
「セネ……メラ……だと?」
空気が凍った。
突然おとさんは体を震わせる。机のブレ具合から、震度四くらいの強さはありそうだ。
なにより、笑顔のままだから怖い。
そして、机の中から大量のエロ本が流れ落ちていた。
見た感じ、俺と同じで紳士力が高そうに見えたんだが、なんてことはない。ただの変態だったか!
「お、おぃ。どうしたんだ?」
俺の座席まで振動が伝わってきているので、迷惑極まりない。
「うっ。奴の名前を聞くだけで、震えが止まらんっ」
「あぁ、解る解る。セネメラは超絶美少女だからな~。姿を思い浮かべるだけで、ビクンビクン、しちまうよな」
「たわけっ! あいつは、美少女の皮を被った悪魔だぞ! 確かに見た目だけだったら、ビクンビクンするが、奴の本性を知ったら、びゅくんびゅくん、だ!」
なにを言っているのか解らないほどに、おとさんは動揺している。
「なにかあったのか?」
様子が尋常じゃないので理由を尋ねた。
「わ、私はなっ。奴に毒殺されかけたのだ! おかげで、最近はロリータを見るだけで痙攣を起こす始末!」
「あ。この学校で毒殺されかけた奴って、おとさんだったのか」
そういえば、アレス先生が言っていたな。この学校に、一人だけセネメラに毒を盛られた奴がいると。そして、可愛そうなことにそいつは解毒されなかった。
「よく、生き伸びたなぁ」
他人事のように俺は呟く。
「私は女性の乳は好きだが、乳製品が大嫌いでな! それなのに牛乳を六リットルも飲みほして、毒素を全部厠でリバースしたのだ……」
「へぇ。そりゃあ大変だったなぁ。ま、俺はちゃんと解毒して貰ったがな!」
ちょっと自慢気に言ってみた。
「なに? 慎也もセネメラに毒を盛られたのか?」
「まぁな。俺は、解毒されたけどな!」
『解毒』の部分を強調して言う。
「ということは、慎也も奴にハレンチなことをしたのか?」
「……おとさん。セネメラにハレンチなことしたのか」
ジト目でおとさんを見つめる俺。
「待て。ハレンチと言っても、高い高いをしただけだ! あの容姿をみたら、誰だってしたくなるだろう?」
なんだろう。俺は、おとさんにえらく近親感を抱いてしまった。
「……それで、どうだった?」
俺の問いに、おとさんは不敵な笑みを浮かべた。
おそらく、俺の聞きたいことを理解してやがる。
「小さな体を持ち上げたとき、――あの兵器が、――二つの大きな果実が、――ぷるんっ、ぷるんっ!」
「っ!」
確かにそれを見るためなら、命を掛ける価値はある!
否、命を掛けるべきだ!
「この、ハッピーボーイめ!」
皮肉をたっぷりと込めておとさんに言う。
「ふふ。自らの手で勝ち取らない幸せなど、私は認めぬ」
物凄くおとさんが神々しく感じた。
これが、神という存在なのか!
ガラララ。
そんなことを思っていると、教室の後ろ扉が開かれた。
思わずそちらへ視線を向ける。
そこには、無表情な金髪ロリ巨乳美少女のセネメラの姿。
「セネッ、セネメりゃぁ!」
おとさんが奇声を上げた。
おい! 神々しさはどこへいった!
そんなおとさん同様に、俺にも気にした素振りは見せず、セネメラは後ろを通りすぎていく。
……やっぱり、俺を気に入ってるわけじゃないようだな。
俺の顔など一目も見なかった。
少しでも自惚れていた自分が情けないぜ。
だけど、俺の横には更に情けない奴がいる。
びゅくん、びゅくん。
白目を剥き、口から泡を出し、痙攣をするおとさん。
「あぁ。確かに『びゅくん、びゅくん』してるわ」
俺は、そんなおとさんを放置して、教壇に立っているアレス先生の話しを聞くのだった。




