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神のから騒ぎ  作者: あすかはなび
第一神話 欲望の果てに
11/29

#11

 

 俺の頭に、優しく手をぽんっと置いたアレスさん。


「俺はっ、別に優しくなんてないです! ただ、同情しただけです。同情とは、した方の満足でされる側には迷惑極まりないでしょ?」


 そう言いながら、俺はアレスさんの手を軽く払った。

 そんな、俺とアレスさんのやりとりを茶番に思ったのか、


「小さき人間よ。我らが、森羅万象学園にお前を招いた理由――」


 校長が声を強めて言う。


「俺に、神を信仰しろってことですか?」


 校長が全てを言い終える前に、俺は推測した理由を言葉に出した。

 言われるまでもない。『解っている』と顔に出しながら。


「……人間一人の信仰くらいでどうにかなるなら、苦労しないだろう?」


 馬鹿とは直接的に言われていないのに、アレスさんの視線が俺にそう告げていた。


「馬鹿ではない、アホと言いたいのだ」


「また心を見透かされた!?」


「慎也は馬鹿だから、考えていることが解りやすい」


「馬鹿とも言ってるじゃん……」


「ごほんっ。理由を簡潔に言うとだな、小さき人間。お前には神達の心の支えになって貰いたいのだ」


 咳払いをして、ズレた場の空気を戻す校長。


「あのー、もう少し具体的にお願いします」


 ホント、馬鹿で申し訳ない。

 あ、救いようのある馬鹿な。


「むむぅ。それはだな、えとな、うーんと」


 さっきの言葉で、俺が理解すると思っていたのだろう。

 そのため、校長は他の言葉を考えていなかったみたいだ。


「神達は、人間不信に陥っている。人間の為にと思って力を酷使していたにも係わらず、人間が信仰しなくなったからだ。慎也には神たちと接して貰い、人間とは捨てたものではないな、と思わせて欲しいのだ」


「それだぁっ!」


 言葉に詰まった校長は、アレスさんの出した助け舟にどっかりと乗った。


わたしたちが人間を補助しなくては、人間は滅びかねない。人間が滅んだら、私たちにも滅びは訪れるからな」


 続けて言うアレスさんの説明に、校長は腕を組みながら、うんうんと頷く。


「でも、アホな俺にできますかね? 俺は無理だと思う」


 そんな大層な役目を果たせるとは思えない。俺には荷が重すぎる。

 だけど、俺の弱い部分を打ち砕くように、アレスさんは「できる」と即答した。


「セネメラが連れてきたということもあるが、アテナが大切な会議よりも優先した存在だからな。慎也になら、任せられるよ」


 アレスさんの、自信に溢れた表情と言葉。

 どうしてだろう。俺まで自信がこみ上がってくるような気がした。


「……解りました。一応は協力をさせてもらいます。だけど、過度な期待はしないでくださいね?」


「はは。私は慎也に過度な期待なんてしないよ?」


 笑いながらそう言って、俺の額を優しく人差し指で突くアレスさん。

 思わず俺の心臓が大きく跳ねた。

 アレスさんが俺に初めて見せた素の笑顔が、……とても魅力的だったからだ。


「むっ! 良い気になるなよ、小さき人間! 我はお前を認めてないんだからなっ!」


 野良猫が威嚇をするように、ミャーとする校長。

 ブルマ姿でそれは反則すぎる。

 そんなやりとりをしていると、


「……ん、ん」


 アテナ理事長が目を覚ましたらしく、上半身を起こしていた。


「アテナ理事長!」


 俺はF1カーがコースを走り抜けるときに奏でる「SUUUUUN」と同じ効果音を発しながら、アテナ理事長に駆け寄った。 

 そして、嬉しさのあまりに、高い高い。


「ふぇ? は、恥ずかしいよ。……降ろして?」


 顔を真っ赤にさせるアテナ理事長。

 校長とアレスさんの視線が、刃物のように俺の背中を刺してきて痛い。

 校長に限っては、視線だけでなはなく、今すぐにでも俺を撃退できる態勢をとっていた。


「す、すいません。嬉しさに我を忘れました」


 ゆっくりと、アテナ理事長を降ろしてあげる。

 その際、アテナ理事長が名残惜しそうな表情を浮かべた気がしたが、おそらく俺の思い違いだろう。


「ごめんね。理由を話す前に気を失っちゃったみたいで……」


「いえ、校長とアレスさんが教えてくれたので問題ないです」


「できれば、私から話したかったんだけどね」


 正直言うと、俺はアテナ理事長の口から、あの重い話は聞きたくなかった。

 だからといって、アテナ理事長が命を削ってまでも力を解放して気絶したことが正解とも思えない。

 なんとも複雑な気持ちだ。


「それで、……慎也は協力してくれるの?」


 そう言って、下から覗いてくるアテネ理事長の表情には不安が溢れている。

 俺はその不安を解消してあげるために、アテナ理事長の頭を優しく撫でた。


「ん」


 吐息を漏らし、目を細めて気持ちよさそうにしているアテナ理事長。

 俺は、そんなアテナ理事長を眺めながら、 


「えぇ、勿論!」


 自信を込めて、力強く宣言した。

 俺にどこまでできるかなんて解らない。

 だけど今は、神様のくせしてやけに人間臭い、このひとたちに笑顔でいて貰いたい。

 その想いがあるだけでも十分じゃないだろうか?


 ――俺は、『不本意』ではなく、『本意』で森羅万象学園へと通うことを決めたのだ。


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