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神のから騒ぎ  作者: あすかはなび
第二神話 新天地
12/29

#1

 俺は今、物凄く緊張している。

 手のひらは汗でヌメヌメしてるし、背中も汗でヌルヌルしてるし、脇なんて……。まぁ、とにかく全身が汗ぐっちょだった。

 なぜかって? それはだな、


「ど、どうも。転校生の緒方慎也です。よろしくネ?」


 手書きにもかかわらず、行書体で『緒方慎也』と書かれた黒板の前に立って、自己紹介タイムだからだ!

 今まで転校生を見てきたことはあったが、見られる側になるのは初めてだ。

 まさか、こんなにも胃が捻じれそうになるまでの神経を使うだなんて。

 しかも、クラスメイトは神だし! 緊張しないわけがない!

 俺には刺激が強すぎて、クラスメイトの顔を目視することができないことから、下を向きながらの挨拶。

 だから、どんな目で俺が見られているのかは解らない。

 その代わりに普段よりも良く聞こえる耳が、ガヤガヤと騒ぐクラスメイトの声を拾ってえらく精神にくる。


「みんな仲良くしてやれよ。それで、慎也に質問のある奴はいるか?」


 アレスさん……いや、先生がクラス全体に恒例ともいえる質問タイムをとった。

 質問する方は良いよ!

 でも、される方にとっては胃が捻じれるを通りこしてバーストしてしまう!

 一体どんな質問がくるんだ? 

 いや、そもそも男の転校生に質問する奴なんていないか。


「ん。じゃあ、インドラjr.」


 おったよ。

 アレス先生が生徒と思わしき名前を呼ぶと、呼ばれた奴が俺に対して声をかける。


「転校生ィに質問するゥ」


 しかも男だよ。この声! 厳ついというか、化け物みたいな声してんな。

 絶対に外見はマッチョだな。


「は、ハイ」


「尻ィのサイズを教えてくれェ!」


「88㎝です……って、なに言わせやがる!」


 思わず、がばっと声の発信源へと視線を向けた。

 美少女転校生に『スリーサイズ教えて下さい!』みたいな質問しやがって!


「あ」


 ここにきて、俺はようやくクラスメイトの姿を一望した。

 なんという絶景……。

 まるで、富士山の頂上で雲から溢れた後光を見たときのような――じゃねぇ。

 なんだ、このクラス。

 制服着ないで勘平を着てる奴おるし。

 ここは遊園地か? と尋ねたくなるような、うさぎのきぐるみを着た奴。

 ハード・ロックを愛してるぜ! と言わんばかりの、赤髪のモヒカンに、ドクロマークの入ったタンクトップを着たマッチョ、……こいつは今質問してきた奴だ。

 ……前言撤回。

 この三人が異様にズバ抜けているだけで、他の生徒は普通だ。

 俺は後ろに振り返って、小声でアレス先生に助けを求めた。


「(アレス先生っ! なんですか、あの異様な三人は! 怖いんですけどっ! 特にモヒカン!)」


 アレス先生も小声で俺に返す。


「(ん? あぁ、気にするな。……根は良い奴らだ。多分)」


 多分かい!

 絶対にあの三人とはかかわりたくない。特にモヒカン!

 なんとしても係わらないように――


「ティィーチャァー! 転校生ィの座席ィィ、ミーの横にしてくださいィィ!」


 モヒカンがめっさかかわってきたぁ! なんなんだよ、アイツ!

 喉が潰れるような喋り方、絶対にヘヴィ・メタルを意識してるよ!


「だ、そうだが。慎也、インドラjr.の横で良いか?」


 アレス先生は意地悪そうな顔をして、俺に聞いてきたので、俺は小声で言い返す。


「(良いわけないでしょう!? モヒカンの横になるくらいなら、最前列よりも前の座席、先生の机の横の方がまだマシです!)」


「……なら、私の横にくるか?」


 そう言ったアレス先生は色っぽくて、思わず「はい!」と言いそうになる。

 つか、ふざけてないで助けて下さい!

 俺のそんな心境を解っているのか、解っていないのか。否、解っていてアレス先生はこの状況を楽しんでやがる。


「アレス殿」


 喧騒が溢れる教室内の声を突きぬけて、その声は聞こえた。

 芯が強く、たくましく、それでいてどこか優しい。

 思わず身を委ねたくなるような声。

 声の主は、黒髪で勘平を着た美男子。

 俗に言うイケメンだった。


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