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11.魔道具店で不審なものを見つける

エドアルドがある店に目を向ける。


「そこの店に、魔石や魔道具を売っているんだけど、ちょっと寄ってみてもいいかな?」

「ええ、いいわよ。わたしも見てみたい」


 二人は魔道具店に入った。


 いろんな商品があり、どれも整然と並べてあった。


 店の様子から見て、貴族向けだということはすぐに分かった。というより、魔道具は高価なもので、庶民にはなかなか手が出ないのだ。


 店の主人が笑顔で声をかけてくる。


「何かお探しですか?」

「魔石はあるかな?」

「はい、最高級のものがございますよ。入荷したばかりです」


 主人に案内されたショーケースには、同じサイズにカットされた魔石が磨かれ、綺麗に並んでいる。


「たくさんあるんだね」


 魔鉱石は鉱山で獲れるが、それだけでは役に立たない。それに魔力を込めれば、魔石となり、魔道具の原動力となるのだ。


 そして、どんな魔道具もこの魔石がなければ、ただの『物』でしかなかった。それくらい大事なものだ。


 エドはそれを手に取って、じっと見つめる。


「この魔石、どこの商会から入荷したのかな?」

「ミュラー商会ですよ。王妃様のご実家が運営されている商会ですから、魔石のグレードは確かです」

「ほう。ミュラー商会ね……」


 彼は店の窓に向かってかざして、魔石をじっくり観察した。


「じゃあ、これを五個くれ」

「かしこまりました」


 主人は恭しく頭を下げ、五個の魔石を美しい箱に収めた。


「他に、ミュラー商会から仕入れているものはあるかな?」

「いろいろありますが……。そうだ。新しい薬がちょうど入荷したところです。具合が悪いときに飲むと、たちまちよくなるそうで、とても人気なんですよ」


「では、それもくれ。三本だ」

「ありがとうございます」


 薬の瓶にはきちんとミュラー商会の印が彫ってある。屋台にあったような怪しげな薬ではない証拠で、いい値段がつけられていた。


 店の主人は機嫌よさげに笑みを浮かべながら、魔石が入った箱と薬の瓶が入った箱を袋に入れてくれた。


 店を出てから、アリーシアは彼に話しかける。


「魔石って、あんなに値段が高いとは知らなかったわ」

「それだけの価値があるからね。本当に最高級の魔石ならば」


「えっ、本物でしょう? さすがに偽物だなんて……」


「偽物……というわけじゃない。魔力は入っているし、元は確かに魔鉱石だ。ただ……魔鉱石としての質が悪い。これでは、魔力量が少ししか入らないだろう。つまり……これは粗悪品だ」


 エドアルドはそう言い切った。


「え、でも……まさか……ミュラー商会が……」


 粗悪品を売るなんて、あまりにも考えなしだ。それでは、すぐに魔道具自体が使えなくなってしまって、新しい魔石を購入しなくてはならなくなる。


 魔道具を作る彼にしてみれば、魔石のせいで、すぐに壊れると思われかねない。腹立たしい限りだろう。


「じゃあ、薬のほうは……?」

「どうだろう。魔石共々、魔塔でしっかり鑑定してもらうよ」

「もし、それも粗悪品だったら?」


 彼は唇をギュッと引き結んだ。目つきが鋭くなっている。


「本当にミュラー商会のものなのか。それを確かめる必要がある。そして、どうしてミュラー商会がそんなあくどい真似をしたのか、調査する必要があるな」


「ちょっと待って。エドが調べるの? 普通、どこかに通報するとか……」


 思わずそう言ってしまったものの、通報する先は街の治安を守る王都警備隊になる。この警備隊の所属は王宮だが、エドアルドはまだ王宮に関わりのある人間と接触したくないはずだ。


「なんにしても、まずは鑑定だな。証拠が必要だ」


 確かに、通報するにしても、魔塔に鑑定書があれば心強い。それに、魔塔のほうから匿名で王都警備隊に通報するという手もある。


 それにしても、ただの街歩きのはずだったのに、なんだかおかしな方向へ進んでいっているようだ。


 アリーシアは復讐だけでなく、別のことにまで関わることになるかもしれない。


 いや、今の時点では関わりはないけれど、なんだかそんな予感がしてならなかった。

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