第388話 湊ちゃんと一緒に疑惑を検証する
さて、策士の湊ちゃん。私は湊ちゃんのアドバイスに従って動いている。
言われた通り、過剰なくらいにもりもりさんとのスキンシップを演じた。
ドローンが映すお兄ちゃんともりもりさんの映像を見ながら、同時に湊ちゃんと通話を開始する。ビデオ通話の画面には湊ちゃんの顔がアップで映っていた。
「見てたよ、春菜」
ドローンで撮影されている映像は湊ちゃんにも送っていた。
湊ちゃんは政府の仕事をしながら、時間を作って通話をしてくれていた。
「あれで良かったかな?」
「いいものを見せてもらった。ごちそうさま」
ビデオ通話の向こう側で、湊ちゃんは両手を合わせていた。可愛らしくウィンクもしてくる。
「念のために聞くけれど、これは本当に作戦なんだよね」
「うん。もちろん」
今日の湊ちゃんの肌は艶と張りがある。瑞々しい笑顔をこちらに向けている。
「私とお兄ちゃんが仲良くしたり、私ともりもりさんがラブラブしたりするところを湊が見たかったわけではないよね?」
「それはもちろん、見たいでしょ?」
「見たいのですか……」
「ご飯3杯はいけます」
「そりゃ、どういたしまして……」
どこまでが湊ちゃんの作戦なのか、よくわからない。
「ところで春菜のあれは演技だったの? 本当にお姉さんになってもらいたい感じだったけれど」
「半分は本心だよ。そりゃあさ、命がけで私のことを助けに来てくれたし、もりもりさんが義姉さんになってくれたらいいなって思っている。でも、お兄ちゃんの気持ちが一番だからね」
「そうだよね。お兄さんがミランダさんを選ぶのなら仕方がないよね」
「ただ、二股だとしたら、お兄ちゃんだとしても許されないことだからさ……」
「それをはっきりさせないとね」
「どうなんだろ? 湊からあの2人はどういう関係に見える?」
私たちはドローンに映し出された映像を見ていた。湊ちゃんは遠く離れた場所からスマホで見ているから、わかりにくいかもしれない。画面が小さいから細かい部分までは見えないと思う。
映像の先には恐ろしいくらいに洗練された戦い方をする2人がいた。いちゃいちゃする余裕はそこにはない。息のあった連携で、互いの長所を活かし、短所を補いながら戦っている。
スピードタイプのもりもりさんが敵を翻弄しつつ、お兄ちゃんがとどめを刺す。パワーのある敵の場合はお兄ちゃんが盾となり、もりもりさんが攻撃に回る。
モンスターの攻撃タイプや地理的条件に応じて臨機応変に戦い方を変えている。判断も瞬時に行われ、恐るべき速度でモンスターを倒していく。
「難しいけれど、戦闘の相性がいいから仲がいいようにも見えるよね。恋愛になるとまた違うかもしれないしね」
「この2人にかけられた疑惑は白なのかな?」
「これだけじゃわからないよ。画面が小さいからよく見えないし、声も聞こえないから」
「でもこれ以上、ドローンを近づけるわけにもいかないしなあ」
「今は激しく戦っているけど、もう少ししたらこの階層のモンスターもいなくなるよね」
「新しいモンスターをポップしたほうがいい?」
ここは私のダンジョンだから、いくらでもモンスターを生み出すことができる。
「いや、待って。作戦を変えてみよう」
「わかった。指示をお願い」
湊ちゃんは新しい作戦を伝えてきた。
モンスターと自衛隊の装備を送り込むつもりのようだ。
「でもいったい何をするの?」
「まずスローラビットを召喚して送り込もう。ラビちゃんとの見分けがつかないから攻撃してこないと思うんだ」
「そうだね。私たちがラビちゃんを大切にしていることは知っているからね」
「それから、輸送車両を召喚してそこに入ってもらう。スローラビットのジェスチャーで伝えればいいと思う。モンスターもいなくなったし、休憩所代わりに春菜が用意したと思ってくれるはずだよ」
「とりあえず、お兄ちゃんたちにくつろいでもらうわけだね」
「そう。そして狭い空間に男女が2人。そこでのもりもりさんの反応を見てみよう」
「策士ですな、湊」
「まあ、うまくいくかわからないけどね。これが駄目だったら、もう打つ手はない」
「仕方ないよ。やれるだけやってみよう」
こうして密室となった輸送車両の中で、2人を観察することになった。




