第380話 レベルアップ
みんなで端末を取り囲み、覗き込んでいた。
画面には何も表示されておらず、デバイスの読み取り装置だけが光っていた。
私は首を傾げる。ダンジョン・コンピューターを召喚しようと思ったら、レベルアップ用の端末が出現したのだ。
「本当にこれでレベルアップができるのでしょうか?」
私の問いかけに対し、もりもりさんは気楽に答えてきた。
「できるかもしれませんよ。わざわざ事務局まで行かなくても済みます」
「では、まずは私から試してみますね」
私は端末にダンジョンタブレットをかざした。液晶画面に結果が表示された。
【レベルアップ完了。レベルが76から78に上がりました】
「すごい、一気に2つもレベルアップ!」
「俺も試していいか?」
「私も、私も」
2人とも同じように端末にデバイスをかざした。
春日井君のレベルは60から63に、湊ちゃんは58から62に上がった。
「俺は3つレベルが上がった」
「私は4つもレベルが上がった!」
地上1階から10階までのすべての経験値が貯まっていた。それに前回とは違って私たちの戦闘能力も上がっていたし、エンチャント装備も使っていた。
もりもりさんがデバイスをかざすと、レベルは93から94になった。
「さすがに私は上がりにくいようですね。1つだけの上昇です」
「でも、これで奥多摩まで戻らずに済みますね」
ここでレベルを上げられるということは、奥多摩と長瀞の間を電車で移動しなくてよくなる。だいぶ時間の節約になる。
「いつでもレベルアップできるのは大きいですよ。効率が良くなります」
「でも、どうしてダンジョン・コンピューターではなくて、レベルアップの端末なのでしょう?」
「理由はわかりませんが、春菜さんが倒したのは仮想世界のダンジョン・コンピューターで、この世界のものではありません。それと関係があるかもしれません」
「もしかしたら元々レベルアップ端末がここに置かれていて、それをマスター・リッチが改造したのでしょうか?」
「その可能性もあるかもしれませんね」
私のタブレットに表示されていた項目が『ダンジョン・コンピューター(?)』から『レベルアップ端末』に変更されていた。
もりもりさんは私たちに先へ進むことを提案してきた。
「とりあえず、私たちはこのまま11階へ直行しましょうか。あくまでも目標はレベル100です。まだまだ先は長いですから」
私たちはそれに同意し、歩き出した。
春日井君が両手を頭の後ろで組んだ。
「あー、ダンジョンから出なくて良くなったのか。俺は、ちょっと息抜きできると思ったんだけどな」
「きついの? 春日井君?」
「そりゃ、けっこうな。意外と二刀流って精神力を使うんだぜ。でも、獲得したスキルを試してみたい気もする」
「なら、行こうよ」
私はもりもりさんへ顔を向けた。
「もりもりさんもスキルを試したいのではないですか?」
「そうですね。電磁加速については想像ができるのですが、運命打破がどんなスキルなのか、まったくわかりませんね」
「では、さっそく試しに行きましょう」
私たちはダンジョンから出ずに、さらに上へと登っていく。
ここからは十分な経験値を獲得したら、すぐにレベルアップの手続きをしていくことにした。
それに加え、獲得した覚醒スキルを試していく。
春日井君のスキル、才覚起動は発動させると常人離れした動きができるようになる。ただし、時間は短く、再度使うためのチャージ時間が設定されている。ここぞという場面で使う必殺技のようなものだろう。
もりもりさんの電磁加速は少し奇妙だった。私たちはただ単に動作を加速するものだと思っていた。外から見ていると、そのような現象しか観察されないからだ。
だが、もりもりさん側からは違った景色が見えるそうだ。自分の速度はまったく変わっておらず、自分以外の世界がすべて遅くなったような感覚だと説明してくれた。それだけではなく、加速する対象を選んでコントロールすることもできるそうだ。このスキルも春日井君と同様、持続時間は短く、チャージ時間が設定されている。
もう1つのスキル運命打破についてはまったくわからないそうだ。持っているだけで自動的に発動するパッシブスキルのようなものではないかということだった。
私たちは順調にダンジョンを登っていき、レベルを上げていった。20階の階層主を撃破すると、覚醒レベルに変化があった。
もりもりさんが覚醒レベル4から5。
私は5のまま。
春日井君と湊ちゃんが覚醒レベル3から4へと上がった。
通常レベルも4人とも大幅に上がっていた。しかし、段々とレベルの増加は鈍くなっていく。地上28階に到達すると、さすがに攻略が厳しくなりはじめた。
もりもりさんがレベル94から97へ。
私が78から89へ。
春日井君が63から82へ。
湊ちゃんが62から81へ。
しかし、これ以上の攻略は難しそうだった。
29階へ上がるかどうか、相談することになった。




