第379話 覚醒スキルの獲得
【――覚醒レベル4から5に上昇。】
今までに判明している覚醒レベルを上げるための方法は、『レベルアップシード』と『覚醒の種』を使うことだけだった。この2種類のアイテムを使用することでレベルを上げることができた。
ところが、今回はモンスターを倒したことでレベルが上がった。レベルを上げるための新しい方法が判明したわけだ。
覚醒レベルが5になったことで、私の召喚できる枠も1つ増えた。空きスロットが2枠から3枠になっている。
覚醒レベルが上がったのは私だけではない。もりもりさんがみんなに向かって静かに問いかけた。
「みなさんも、ですか?」
すべてを言わなくともわかる。覚醒レベルが上がったのかを聞いている。
湊ちゃんと春日井君が頷く。
「私はダンジョン・リバース&リゾルブの処理時間が半分になりました」
「俺は……」
春日井君は噛みしめるようにして言葉を続けた。
「覚醒スキルを得た。スキル名は才覚起動。まだ、どういったスキルかはわからないけれど……」
もりもりさんは強く頷きながら、私たちに伝えてきた。
「私もです。覚醒スキルは電磁加速と運命打破の2つを獲得しました。私もまだ、どんなスキルかはわかっていません」
「もりもりさんは2つもスキルを獲得したのですか!?」
私は驚きながら聞いた。
「覚醒レベルが2から4になりました。その影響でしょう」
「私は覚醒レベルが5になりました。1つだけ上がるわけではないのですね。湊と春日井君はどうだった?」
「俺は3になった」
「私も同じだよ。覚醒レベルは3になった」
全員が覚醒レベルを上げていたが、2つ上昇したのはもりもりさんだけだった。
「経験値が貢献度に応じて分配されるようなものかもしれません」
「与えたダメージだと、春日井君が一番多かったですよね」
「判断基準はわかりませんね。単純にダメージではない可能性もありますし」
「タブさんに聞いたほうが早いのかな? まあ、知らないかもしれないけれど」
私はタブレットを手にして、画面をこつこつと拳で叩いた。タブさんがすぐに反応してくれた。
『主の言う通り、我は何も知らない。だが、推測することはできる。主がレベル4から5になるための経験値がもっとも多かったと推測される。これはダンジョン・シミュレーターを破壊したことによるものだ』
「私!? 私の貢献度が一番高かったの?」
『次に、もりもり。彼女は無意識に将来獲得するはずだった覚醒スキルを使っている。それにより仮想世界へ引き込まれることを回避した』
「電磁加速と運命打破でマスター・リッチの攻撃を防いでいたわけですか」
『無意識にな』
「これからは意識して使うことができるわけですね。楽しみです」
『いいことばかりではないと思うが……』
「含みのあることを言うのですね、春菜さんのAIは」
『今、この世界での覚醒者は主を含めた4人しかいない。しかし、いつ新たな覚醒者が生まれるかは知れない。ダンジョンハンターはいくつかの勢力に分かれている。アメリカ政府、ロシア政府、秘密結社アルトリアスが率いる組織、その他にもある』
「私はアメリカに所属していますけれど」
「私たちは日本だね。タブさん、いいことばかりじゃないってどういうこと?
私たち以外に覚醒者が生まれたら情報が広まってしまうということ?」
『主たちは覚醒スキルを使うマスター・リッチを倒した。このことをよく考えてみるがいい』
タブさんの言葉に、湊ちゃんが反応した。
「もしかして……」
湊ちゃんの表情は少し強張っていた。
「ハンター同士で戦っても覚醒レベルが上がるということ? つまり、覚醒者同士の殺し合いに発展するかもしれないし、覚醒者だと知られたらその危険が高まる?」
『南波湊は察しがいいな。覚醒レベルのことは隠しておくことだ。そして、覚醒者を倒せばレベルが上がるのか? それは実際に試してみないとわからないが、試す者が現れないことを祈るだけだ』
珍しくタブさんが私たちに寄り添う言葉を告げた。レベルが上がるのかは、覚醒者を殺してみないとわからないことだ。そんなことを実際に実行に移す組織が現れるかもしれない。
「世の中には私たちの想像も及ばないような、残虐な人や組織がいると思う。春菜のAIは心配してくれているの?」
『感情を持たないAIであっても、心配するのは当たり前のことだ。むしろ、AIだからこそ合理的な判断ができる。主たちのような人間がマスターになってほしいと思っている』
「私たち以外に覚醒者を出さない方法はありますか?」
湊ちゃんは丁寧な言葉でタブさんに尋ねた。
『残念ながら、ないだろう』
「そうですか……」
私はこの場の空気を変えようと、装甲車両を召喚してライトで明るく照らした。召喚枠はまだあと2つ残っている。
マスター・リッチを召喚できないものかとリストの一覧を眺めたが、そこにはなかった。代わりに項目にあったのが『ダンジョン・コンピューター(?)』だ。項目名の最後には(?)マークがついていた。
確かに私が戦車で破壊したが、召喚できる扱いになっているとは思わなかった。
今この場所にはマスター・リッチが残したダンジョン・コンピューターが置かれている。
試しに私は召喚のリストから『ダンジョン・コンピューター(?)』を選び、実行した。
出現したものはここにあるダンジョン・コンピューターとは少し違うものだった。
その装置は、まるで銀行のATMを簡素にしたような見た目だった。高さは腰のあたりまでしかなく、下半分は金属製の箱で、ただの台座となっていた。
上部には薄い液晶モニターが埋め込まれており、青白い光を帯びている。その手前には読み取り装置があり、デバイスをかざすように指示するマークが描かれていた。
入力用のインターフェースは、よくある物理キーボードではなく、画面に直接表示されるタッチパネル式となっている。
もりもりさん、湊ちゃん、春日井君が集まってきた。
「なんでしょう、これは?」
「見たことあるような気もするね」
「何かの端末装置かな。モニターもついている。俺もこれをどこかで見たな」
私も見覚えがあり、記憶を辿っていく。
一番最初に気がついたのがもりもりさんだった。
「レベルアップ申請をする時の端末ですよ、これ!」
遅れて私たちも思い出す。
「ああ、確かに!」
もりもりさんは何十回と目にしていたが、私たちはほんの数回しか見ていない。それでも言われてみれば、確かにレベルアップをする時に使われていた端末だと気がついた。




